SHARE:

イラクの親イラン民兵、米イスラエルとの戦争に参加せず

イランは長年、イラク国内のシーア派民兵組織に資金や武器、訓練を提供し、米国やイスラエルに対抗する地域戦略を構築してきた。
2026年2月28日/イラン、首都テヘラン(Getty Images/AFP通信)

中東でイランと米国・イスラエルの対立が激化する中、イランが長年育成してきたイラクの親イラン組織の多くが、戦闘への本格参加に慎重な姿勢を示していることが明らかになった。数十年にわたり地域戦略の柱として築いてきた「代理勢力ネットワーク」が、現在の戦争では必ずしも機能していない状況が浮き彫りになっている。

イランは長年、イラク国内のシーア派民兵組織に資金や武器、訓練を提供し、米国やイスラエルに対抗する地域戦略を構築してきた。こうした勢力はしばしば「抵抗の枢軸」と呼ばれるネットワークの一部として位置づけられ、イラン革命防衛隊(IRGC)の対外作戦部門が支援してきた。イラクの「人民動員隊(PMF)」などが代表例で、これまでイラクやシリアの紛争で重要な役割を担ってきた。

しかし、米国とイスラエルがイランへの軍事作戦を開始して以降、イラクの親イラン組織による大規模な攻撃はほとんど確認されていない。関係者によると、こうした組織の多くは全面的な戦闘参加を避ける姿勢を取っているという。

その背景にはいくつかの要因がある。まず、長年にわたる衝突や指導者の暗殺、補給路の混乱などによって、組織の軍事力が以前より弱体化している点が挙げられる。さらに、シリア情勢の変化などで地域の戦略環境が変わり、従来のネットワークが十分に機能しにくくなっているとの指摘もある。

また、イラク国内の政治事情も影響している。多くの民兵組織は現在、政治活動や経済利権にも深く関わっており、イラク国内での影響力維持を優先する傾向が強まっている。戦争に参加すれば、国内の政治的立場や経済基盤を危険にさらす可能性があるためだ。

さらに、イラク政府や社会の中には、地域戦争に巻き込まれることへの強い懸念がある。イラクは2000年代の戦争で大きな被害を受けてきたため、国内の安定維持を重視する声が強い。民兵組織の指導者の中には、イランとの関係を保ちながらも、イラクを新たな戦場にすることには慎重な姿勢を示す者が多いとされる。

それでも専門家は、状況が変化すれば民兵組織が参戦する可能性は残っているとみている。特に、シーア派の宗教聖地が攻撃されるなど宗派的緊張が高まれば、戦闘参加の圧力が強まる可能性があるという。

イランは長年、地域各地に同盟勢力を築くことで軍事的影響力を拡大してきた。しかし現在の戦争は、そのネットワークが必ずしも一枚岩ではないことを示している。イラクの民兵組織がどこまでイランを支援するのかは、中東情勢の行方を左右する重要な要素となりそうだ。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします