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イランがトランプ発言を否定「交渉ない」発電所攻撃5日間延期


トランプ氏はこの日、当初予定していたイランの電力インフラへの攻撃を5日間延期すると発表した。
2026年3月23日/イラン、首都テヘラン、イスラエル軍の空爆を受けた建物(AP通信)

米イスラエルとイランの軍事衝突が激しさを増す中、イラン政府は23日、米国との交渉が行われているとのトランプ(Donald Trump)大統領の発言を否定し、米国が発電網への攻撃を延期したのは事実でも「交渉はない」と明言した。トランプ氏が描いた外交的展開と、イラン側の受け止めには大きな隔たりがあることが改めて浮き彫りになった。

トランプ氏はこの日、当初予定していたイランの電力インフラへの攻撃を5日間延期すると発表した。これまでの「ホルムズ海峡封鎖を解除しなければ攻撃する」との強硬な姿勢から一転、ここ数日間で「非常に良好で生産的な対話」が行われたとして、攻撃の猶予を設けたと主張した。トランプ氏は特定のイラン高官との協議を示唆し、停戦に向けた「大きな合意点」が見られた可能性を示唆している。

しかしイラン側の反応は完全に異なる。ガリバフ(Mohammad Bagher Ghalibaf)国会議長は23日、トランプ氏の発言を「偽情報」と断じ、イランと米国の間で直接交渉は行われていないと反論した。また、イラン革命防衛隊(IRGC)も同様に、交渉の事実を否定しつつ、米側が心理戦を仕掛けているとの見方を示した。ガリバフ氏らは、米イスラエルに対する攻撃を続ける姿勢を強調し、電力網などの民間インフラを標的にする可能性を含めた報復を辞さない構えを示している。

この対立は2月末に勃発した米イスラエルによる対イラン軍事行動を背景にしている。この作戦は2月28日に始まり、イスラエルと米軍はイラン国内の軍事拠点や要衝を標的に空爆やミサイル攻撃を実施している。これに対してイラン側もミサイルやドローン攻撃で反撃し、戦闘が拡大した。戦闘による死者は2000人を超えたとの報告もある。

ホワイトハウスはイランが戦闘終結に向けた真剣な姿勢を示しているとの判断に基づき、攻撃延期を決定したと説明しているが、イラン政府の全面否定はこの見方を覆す可能性がある。イラン側はホルムズ海峡を事実上封鎖し、世界の石油供給に大きな影響を与えている状況にあり、米側はこれを懸念している。トランプ氏は海峡の通航再開を外交交渉の目標の一つとして挙げているが、具体的な進展や合意内容については明らかにしていない。

市場はトランプ氏の発言を受けて敏感に反応、原油価格は急落した。一方で株式市場は上昇し、リスク回避ムードがやや緩和されたとの分析もある。これは、発電網攻撃の延期が供給懸念を鎮めたとの見方による。だが、こうした市場の動きが外交的進展を反映しているかどうかについては疑問も残る。

外交面では第三国を仲介する非公式な接触があるとの指摘も出ている。パキスタンやエジプト、湾岸諸国が関与し、イスラム圏内外での調整が図られている可能性が報じられているが、これらは公式な直接交渉とは異なるとみられる。イラン側が正式な交渉を否定しているため、状況は依然として流動的だ。

イランの否定を受けて、米側が直面する外交上の課題は深刻だ。戦闘終結と平和協定への道筋を描くには、双方にとって受け入れ可能な条件を見いだす必要があるが、現在のところその展望は不透明である。双方の主張が食い違う中、戦局がどのように展開するかは世界の安全保障とエネルギー市場に大きな影響を及ぼす可能性が高い。

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