イラン通貨暴落でイラク巡礼産業に打撃、観光客激減
ナジャフはイラク国内でも有数のシーア派巡礼都市で、伝統的にイラン人が最多の訪問者を占めてきたが、ここ数年でその数は激減している。
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イランの通貨危機がイラクの巡礼産業に深刻な打撃を与えている。中でもシーア派イスラム教の聖地として知られる聖地ナジャフでは、これまで大多数を占めていたイラン人巡礼者の激減により観光・宿泊業が落ち込み、地域経済が疲弊している。ナジャフの市場で祈祷用の数珠や関連用品を販売していた商人は、以前は店を二軒構えていたが、今は借金返済のために一軒を売却し、残る店も閉鎖の危機にあると語っている。
ナジャフはイラク国内でも有数のシーア派巡礼都市で、伝統的にイラン人が最多の訪問者を占めてきたが、ここ数年でその数は激減している。2023年には1日あたり3000〜3500人が訪れていたが、現在では多い日でも100〜250人程度にとどまっているという。これにより、ホテルやレストランを運営する事業者らは収入源を失い、雇用削減や休業に追い込まれている。地元ホテル・レストラン協会の代表は、2020年には350軒あったホテルが現在では250軒にまで減少したと指摘し、約100軒が観光業から撤退したことで多くの従業員が失業したと明らかにした。
この巡礼者減少の背景には、イランの通貨リアルの急落がある。2025年には対ドルでほぼ半値に下落し、為替の不安定さが増したことで旅行費用の予測が困難になった。ある事業者は「旅行費用が1日で200ドルから220ドルに跳ね上がることもあり、経済的な負担が大きい」と述べている。こうした為替変動やインフレは、一般のイラン人にとって国外旅行を難しくしている。
イラン国内では通貨価値の急落と物価上昇が続き、生活費の高騰が国民の負担を増大させている。インフレ率は2025年末に42.5%に達し、通貨安は日常生活にも深刻な影響を及ぼしているとの報告もある。こうした経済的な圧力を背景に、国内で抗議活動や社会的な不満が広がっているとの分析もある。
イラクの巡礼産業はイラン人観光客の減少によって収益構造の見直しを迫られている。これまで主要顧客だったイラン人の代わりに湾岸諸国やパキスタン、レバノンなど他国からの巡礼者の誘致を試みる事業者もあるが、依然としてイラン人の割合が高く、需要喪失の影響は大きい。観光業全体の回復には時間がかかるとみられ、ナジャフの商業・観光関連の労働者や中小企業への打撃は続く可能性が高い。
ナジャフの巡礼産業の困難な状況は、イラン経済の混乱が周辺地域にも波及している現実を象徴している。イラン国内の通貨安や物価上昇が収まらない限り、国境を越えた観光・宗教関連の交流には依然として逆風が吹くと見られている。
