SHARE:

戦後の経済崩壊を恐れるイラン、反体制派への弾圧強化


戦争は2月末、米国とイスラエルによるイラン本土への先制攻撃を契機に拡大し、両国間の激しい軍事衝突へと発展している。
2026年3月28日/イラン、首都テヘラン、イスラエル軍の空爆を受けた建物(AP通信)

イランは現在、米国とイスラエルとの戦争が激化する中で、国内の反対意見や批判を抑え込むための弾圧を強化している。これは単に治安維持を目的とするものではなく、戦争の長期化による経済崩壊への懸念が背景にあるとみられている。国内外の専門家や活動家は、この動きを「経済的・政治的危機に対する指導部の反応」と分析している。

戦争は2月末、米国とイスラエルによるイラン本土への先制攻撃を契機に拡大し、両国間の激しい軍事衝突へと発展している。その結果、イラン経済は大打撃受けた。国際エネルギー機関(IEA)によると、ホルムズ海峡の事実上の封鎖や地域インフラの破壊により世界の油輸送が大幅に停滞し、国際原油価格が急騰するなど、世界的な経済混乱が続いている。

こうした戦争下の苦境が国内の不満を強めるなか、イラン当局は反体制活動に対する取り締まりを強化している。治安部隊や革命防衛隊(IRGC)、準軍事組織バシジが国内の主要都市や戦略的地点に展開し、抗議や批判の芽を未然に摘もうとしている。ロイター通信によると、12歳に満たない少年までが検問所や治安維持活動に動員されているとの指摘もあり、抑圧の度合いは戦前とは比べ物にならないほど深刻化しているという。

インターネットや情報発信の自由も制限されている。国家は通信やオンライン活動を管理し、当局に批判的な情報の流出を防ぐために巨大な監視・検閲体制を敷いている。実際、2月末以降、反政府的なオンライン活動を行ったとして460人以上が拘束され、1000人以上の逮捕が報告されている。逮捕者の多くは戦争関連の映像を撮影したり、政府に批判的な見解を海外に発信したと伝えられている。

また、少数民族地域でも弾圧が激化している。クルド人、アラブ人、バルチ人が多く居住する地域では治安部隊による拘束や拷問、住民の強制移動に関する報告が複数あり、戦争の混乱を利用して地方の反政府運動を封じ込める動きが顕著になっている。これらの地域の住民は、戦争と内政の両面から圧力にさらされ、人道的な懸念が国際社会でも高まっている。

イラン国内での抑圧強化は単に政治的な反対意見だけでなく、経済的な不満に対する恐怖感から来ているとの分析がある。戦争による経済的打撃はすでに表面化しており、失業率の上昇や物価高騰、供給チェーンの混乱が日常生活を圧迫している。戦争が長引くほど、これらの経済問題が国民の間に不満として蓄積し、社会不安につながる可能性があると警戒されている。

国際的な圧力も高まっている。戦争による世界的なエネルギー供給への影響が経済の先行きを不透明にしていることを受け、国際通貨基金(IMF)は世界経済の見通しを引き下げ、各国が慎重な政策対応を取るよう呼びかけている。原油価格高騰や物流の混乱は輸入依存度の高い国々の物価や成長にも悪影響を及ぼしている。

このような国内外の圧力が重なる中で、イラン指導部は戦争終結後の展望にも警戒を強めている。戦争が終結した際、経済の崩壊や社会的不満が噴出することを恐れ、今のうちに反対意見や潜在的な抗議を抑え込む戦略を取っているとみられている。しかし、抑圧が内部の緊張をさらに高め、戦後の再建をより困難にするとの指摘もある。

イランの状況は戦争がもたらす外的な軍事的衝撃だけでなく、内部の統治や社会の安定をいかに維持するかという難題と直結している。外交的な解決とともに、経済復興と人権保護の観点から包括的なアプローチが求められているが、現時点では戦争と抑圧が同時に進行している緊迫した状況が続いている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします