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イラン外相、レバノン訪問へ、ヒズボラ武装解除問題で微妙な関係続く中

イランとレバノンの外交当局は今後の訪問日程や協議内容について正式な調整を進める見込みであり、中東の緊張緩和や双方にとっての利益追求につながるか注目が集まっている。
イランのアラグチ外相(Bloomberg)

イランのアラグチ(Abbas Araghchi)外相は11日、隣国レバノンの首都ベイルートを訪問する意向を示した。これは、レバノン外相が直前にテヘラン訪問を辞退したことを受けてのものであり、微妙な外交関係を反映している。

アラクチ氏は11日、レバノンのラッジ(Youssef Raji)外相から正式な招待状を受け取り、ベイルートで会談を行うために同地を訪れることを明らかにした。ラッジ氏は前日、テヘラン訪問を現在の状況下では困難だとして辞退する意向を表明したが、対話そのものを拒否したわけではないと強調していた。

ラッジ氏はロイター通信の取材に対して、「現時点でテヘラン訪問は受け入れられないが、イランとの対話を断念するものではない」と述べ、アラクチ氏にベイルートでの会談を正式に要請したと明らかにした。

これに対しアラクチ氏は自身のSNS投稿で「喜んでベイルートへの招待を受け入れる」と応じた。ただし、両国が正式な外交関係を有しているにもかかわらず、なぜ中立的な場での会談が必要とされるのかとの点には「困惑している」と述べ、ラッラ氏の立場に理解を示しつつも異議を唱えた。

またアラグチ氏は、イスラエルによる占領行為や停戦違反が続く現状を踏まえ、ラッジ氏がテヘラン訪問に消極的になる背景をある程度理解していると述べた。さらに、両国関係は「兄弟的」であり、外交関係が完全である限り中立的な開催地は必要ないとの見解も示した。

ラッジ氏はテヘラン訪問を辞退した際、「レバノン政府はイランとの関係を新たな段階へ進める用意がある」と述べ、両国関係の基盤として互いの主権尊重や内政不干渉の原則を重視する姿勢を強調した。さらに、強固な国家を築くためには政府が武装の独占権を保持しなければならないと強調。これはイランと緊密な関係にある「ヒズボラ」の武装解除問題を念頭に置いたものと受け止められている。

背景には、中東地域で続く緊張関係がある。レバノンではイスラエルとの国境線で停戦違反が続いており、国内で政治的・軍事的圧力が高まっている。また、ヒズボラ問題を巡る国内外の圧力やイランと西側諸国の対立が外交関係に影響を与えているとみられる。こうした複雑な地域情勢が外相間の訪問調整にも影響している可能性がある。

一方で、今回のアラクチ氏の訪問受諾はベイルートでの対話を通じて両国関係を強化・再構築する意図とも読める。レバノン政府は今回の会談を「互いの尊厳と主権を尊重しつつ関係を深化させる機会」と位置づけており、地域の安定化と外交的関与を模索する姿勢を打ち出している。

イランとレバノンの外交当局は今後の訪問日程や協議内容について正式な調整を進める見込みであり、中東の緊張緩和や双方にとっての利益追求につながるか注目が集まっている。

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