◎イスラエル軍の高層ビル空爆は最も物議を醸した戦術の1つだった。
2021年5月15日/パレスチナ、ガザ地区で活動している海外の主要メディアが入っていたビル(AP通信/Mahmud Hams/POOL)

8月23日、人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は5月のイスラエル・ガザ紛争におけるイスラエル軍の4つの高層ビルに対する空爆は国際戦争法に違反していると述べた。

HRWの危機および紛争研究者であるリチャード・ウィアー氏は声明の中でイスラエル政府に対し、4つの高層ビルに対する空爆を正当化できる資料を作成するよう命じた。「イスラエル軍は4つのビルを攻撃した理由と、攻撃を正当化できる証拠を提出しなければなりません...」

イスラエル軍はHRWの声明を却下し、「ハマスと他のテロ組織は高層ビルを軍事目的で利用し、居住者を人間の盾として利用した」と反論した。「テロリストが高層ビルの中に隠していた資産は高い軍事的価値があり、それを破壊することは戦略的に重要でした...」

HRWが5月のイスラエル・ガザ紛争に関する報告を発表したのはこれが3回目。1回目は民間人数十人を殺害したイスラエル軍の空爆、2回目はハマスのイスラエルに対する無差別ロケット攻撃を非難したが、双方は非難を却下している。

国連の統計によると、ガザ地区では子供66人と女性41人を含む260人が死亡したという。ハマスは戦闘員80人の死亡を認めたが、イスラエル軍は80人以上殺害したと主張している。イスラエルでは子供2人を含む民間人12人と、兵士1人が死亡した。

イスラエル軍の高層ビル空爆は最も物議を醸した戦術の1つだった。標的の中には海外の主要メディア事務所を収容した12階建てのアルジャラービルも含まれており、数十の家族が生活していた

AP通信はアルジャラービル内にハマスを含む過激派組織の資産があった証拠を公開するようイスラエル軍に求めたが、この要求を含む主要メディアの訴えは全て却下されている。

HRWは声明の中で、空爆の目撃者および被害者18人にインタビューし、さらにイスラエルとパレスチナの当局者と過激派組織の声明や情報も精査したと述べた。その結果、ビル内に過激派組織の資産や何かしらの施設があったという証拠は見つからなかったという。

また、仮に過激派組織がビル内に資産を隠し持っていたとしても、空爆の威力は明らかに不釣り合いであり、イスラエル軍は民間人への危害を回避する義務があったと述べた。

これに対しイスラエル軍はHRWが指摘して全ての事件について、「政府は住民に避難勧告を出し、民間人の退避が完了したことを確認し、空爆した」と主張した。

イスラエルとハマスは2007年の選挙でハマスがガザ地区の支配を確立して以来、4つの戦争と数百の小競り合いを演じてきた。5月に勃発した最新の紛争は11日間続き、HRWを含む世界の人権団体と国連は当事者を戦争犯罪で厳しく非難した。

HRWは今年初め、イスラエルはヨルダン川西岸地区とガザ地区にパレスチナ人を追いやったと非難し、「イスラエルのアパルトヘイト政策は国際犯罪法に違反している」と指摘したが、イスラエル政府はこの主張も却下している。

HRWはオランダハーグの国際刑事裁判所(ICC)に、イスラエルとハマスの戦争犯罪を進行中のガザ戦争調査に追加するよう求めている。イスラエルはICCの管轄権を認めていない。

2021年5月15日/パレスチナ、ガザ地区、海外の主要メディアが入居していたオフィスビルの残骸(John Minchillo/AP通信)

イスラエル・ガザ紛争のタイムライン

・4月13日:イスラエル警察とパレスチナ人が東エルサレムで衝突。パレスチナ人はイスラム教の聖なる月の最初の夜に東エルサレムのアル=アクサー・モスクで祈りを捧げる予定だった。

・4月15日:ハマスがイスラエルに向けてロケットを発射。

・4月19日:イスラエルの港湾都市ヤッファでアラブ人とユダヤ人が衝突。

・4月20日:ユダヤ人のギャングが、TikTokで共有された正統派ユダヤ人に対する偏見に腹を立て、アラブ人への攻撃を呼びかける。その後、ギャングとアラブ人は小競り合いを演じた。

・4月23日:保守的な数百人のユダヤ人が「アラブ人に死を」と叫びながらダマスカス門に向けて行進を行う。アラブ人は激しく反発し、衝突に発展した。

・4月24日:ガザ地区からロケットが発射される。イスラエル軍は空爆で応戦した。

・5月2日:ハマスがアラブ人に「人間の盾」を形成するよう呼びかける。

・5月4日:ガザ地区のイスラム過激派組織がイスラエルで焼夷弾攻撃を決行。各地で火災が発生した。

・5月7日:ヨルダン川西岸でイスラエル警察とパレスチナ人が衝突。パレスチナ人2人が射殺され、1人が負傷した。

・5月8日:東エルサレム周辺でイスラエル警察とアラブ人が衝突。

・5月10日:アラブ人がイスラエル警察に対する投石攻撃を本格化させる。この日の衝突でアラブ人300人以上が負傷した。

・5月10日:ハマスがイスラエル南部へのロケット攻撃を開始。ネタニヤフ首相は声明で、「敵はレッドラインを越えた」と述べ、空爆開始を宣言した。

・5月21日:停戦協定発効。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)、およびゴラン高原を占領したが、国際社会はこれを認めていない。

聖地エルサレムを奪われた数百万人のパレスチナ人はガザ地区とヨルダン川西岸地区に押し込められ、みじめな生活を送っている。

2021年5月15日/パレスチナ、ガザ地区、海外の主要メディアが入居していたオフィスビル(Hatem Moussa/AP通信)
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