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ヨルダン川西岸地区で入植者によるパレスチナ人襲撃急増

国連のデータによると、2025年は記録的な入植者によるパレスチナ人攻撃の年となっており、西岸で750人以上が負傷したとしている。
2023年2月2日/ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地(Getty Images)

イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区でユダヤ人入植者がパレスチナ人の追放を目的とした攻撃を組織的に実施している。ロイター通信の取材によると、特に「オル・メイル」と呼ばれる丘の上の入植地周辺で入植者が明確な計画のもと行動し、パレスチナ人住民に対する暴力や土地の奪取を進めていることが確認されたという。

オル・メイルはヨルダン川西岸を南北に走る主要道路60号線近くの小規模な入植地だが、同様の前哨基地が増えることで広大な住宅地へと発展してきた。イスラエル政府内でもこれらの拡大方針が意図的なものであると認識されており、将来のパレスチナ国家樹立を阻止する狙いがあるとされる。

ロイターの取材班が確認したところ、入植者らはSNSのテレグラムやWhatsAppを通じて攻撃計画を共有し、戦略的に土地の制圧を進めているという。あるベドウィンの家族は昨年、火炎瓶攻撃で自宅と家畜小屋を焼かれ、土地を追われたと証言した。

国連のデータによると、2025年は記録的な入植者によるパレスチナ人攻撃の年となっており、西岸で750人以上が負傷したとしている。また、イスラエルの市民組織「ピース・ナウ」は、2025年に80の新しい入植前哨地が建設され、同組織が統計を開始した1991年以来最多となった。これは入植活動がますます活発化していることを示している。

イスラエル政府は12月21日、19の入植地や前哨地の正式承認を含む西岸地区での新たな住宅建設を承認した。スモトリッチ(Bezalel Smotrich)財務相はこの動きを「パレスチナ国家樹立を阻む」目的だと述べており、政府として非公式入植地の正規化を進める姿勢を示している。

一方で、入植地拡大やパレスチナ人への攻撃は国際法上違法とみなされる場合が多いが、イスラエルはこれを否定している。国際社会の大多数は占領地での入植活動を国際人道法違反と見なしており、入植者による暴力についても懸念を強めている。

現地のパレスチナ人は入植者による石投げや焼き討ちなどの暴行により日常生活が脅かされていると語る。あるパレスチナの農民はオリーブの収穫中に棒や石を持つ入植者に襲われ負傷したと述べた。

入植者による暴力事件の多くは起訴に至っておらず、イスラエル警察や軍は積極的な介入を行っていないとの指摘もある。人権団体はこうした状況が西岸におけるパレスチナ人の追放と入植地拡大を目的とする計画的な取り組みの一部であるとの見方を示している。

このように、西岸での入植活動は地域の緊張を高め、和平努力にさらなる重荷を投げかけている。国際社会はこの動きを注視しつつ、中東和平プロセスの再活性化を求める声を強めている。

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