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イランの権力システムはどのように機能しているのか

イランの政治体系はシーア派イスラム教の信条に基づく「ヴェラーヤテ・ファキーフ(法学者の統治)」原則を基盤としている。
イラン、首都テヘラン(Getty Images)

イランの政治体制は宗教指導者による統治と形式的な選挙を組み合わせた独特の構造を持ち、最高指導者が国家の中心的権力を握る体制となっている。国民や外国政府から批判や抗議が強まるなか、その仕組みへの理解が国際社会で改めて注目されている。

イランの政治体系はシーア派イスラム教の信条に基づく「ヴェラーヤテ・ファキーフ(法学者の統治)」原則を基盤としている。これは、十二イマーム派の教義に基づき、宗教的権威が政治的権力の根拠となる理論であり、最高指導者に国家の最終決定権を集中させるものだ。現最高指導者ハメネイ(Ali Khamenei)師はこの原則の下で1989年から権力を保持し、後継者を正式に指名していない。

最高指導者は軍・司法・外交・国内安全保障などの主要政策で最終的な決定権を持つ。また、革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps, IRGC)を含む並行する強力な機関を直接統括し、選挙で選ばれた大統領や議会が持つ権限を常に上回る影響力を有している。IRGCは正規軍とは別組織で、国家内外で宗教体制を守る役割を担い、政治や経済にも深く関与している。

イランの選挙制度は一見民主的に見えるが、実際には厳密な事前審査によって制限されている。例えば、法律や候補者を審査する「監督評議会(Guardian Council)」は、最高指導者が任命する半数の宗教指導者と、司法長官が推薦する半数の法曹界出身者で構成され、立法や選挙候補者の資格を審査し、多くの改革派候補を排除してきた。こうした制度は形式的選挙にもかかわらず政治的多様性を制限する機構として機能している。

このほか、最高指導者が任命する「専門家会議(Assembly of Experts)」は、理論上は最高指導者の選出や解任を担う機関のはずだが、実際の権限行使は限られている。また、立法府と監督評議会の間で紛争を調整する「便宜評議会(Expediency Council)」も、最高指導者の指名によって構成され、政策決定に影響力を及ぼしている。

司法制度も同様に宗教界の支配下にあり、裁判官はイスラム法学者が多数を占める。法体系はシーア派イスラム法(シャリア)に基づき、自由な司法判断のみで運用されるものではない。現在の司法長官もハメネイ師が任命した人物で、反政府デモに対する弾圧で西側諸国から制裁を受けている。

一方で、大統領や議会は国政選挙で選ばれているが、その権限は制限されている。経済政策や社会政策の一部には一定の自主性があるが、軍事・安全保障・外交といった核心分野は最高指導者とその直属機関の統制下にあるため、選挙で選ばれた官職者の政策決定力は限定的となるのが現実だ。

このような体制は、1979年のイスラム革命以来、宗教的正統性を打ち出しつつ、外圧や内部の反発を抑えるために構築されてきた。しかし、経済停滞や抗議運動の激化を背景に、体制の正当性や構造的な矛盾への批判も高まっている。こうした複雑な権力構造が、国内の政治不安や国際関係にどう影響するかは今後も注目される課題となっている。

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