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湾岸諸国の輸入業者がルート変更を急ぐ、米イラン紛争で食料輸送に影響も


湾岸諸国の輸入企業にとって特に問題となっているのが食料供給である。
ホルムズ海峡のイメージ(ロイター通信)

中東情勢の緊迫化によりホルムズ海峡が事実上封鎖され、湾岸地域の物流網が大きく揺らいでいる。食料や医薬品、工業製品の輸入に依存する湾岸諸国では、企業や小売業者が貨物の迂回輸送を急ぐなど対応に追われている。海上輸送の要衝である同海峡の機能停止は、地域のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしている。

ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ狭い海峡で、世界の原油輸送の2割が通過する重要な航路として知られる。2月末以降、米国とイスラエルによるイラン攻撃と、それに対するイランの報復攻撃を背景に安全が確保できない状況となり、商船やタンカーの通航が急減した。結果として多くの船舶が海峡付近で待機するか、航路変更を余儀なくされている。

湾岸諸国の輸入企業にとって特に問題となっているのが食料供給である。湾岸地域では食料の約7割が輸入に依存しており、その多くがホルムズ海峡を経由して運ばれてきた。海峡封鎖によって船舶の運航が滞ると、食品や日用品の供給に遅れが生じる可能性が高まる。企業は物流の混乱を回避するため、港湾や輸送ルートの変更を急いでいる。

具体的には、船舶の目的地をアラブ首長国連邦(UAE)やオマーンなど、海峡の外側にある港湾へ変更する動きが広がっている。しかし、これらの港湾は従来の主要港に比べて処理能力が低く、貨物の集中による混雑や遅延が発生している。輸送費の上昇も顕著で、ある欧州産リンゴの輸送では追加費用が約90万ユーロに達したと報告されている。

物流企業も対応を迫られている。中東の物流プラットフォーム企業は陸上輸送のトラックを増強し、港湾から各都市へ貨物を運ぶ体制を急拡大している。一方、大手小売業者は生鮮食品などの不足を防ぐため、航空貨物による輸送を検討するなどコストの高い手段にも頼らざるを得ない状況となっている。

ただし、代替ルートにも不安が残る。湾岸地域では空港や港湾がドローン攻撃の標的となる事例もあり、物流の安全性が完全に確保されているわけではない。実際、UAEのフジャイラ港ではドローン攻撃により石油積み出し施設の一部が停止するなど、エネルギー輸送にも影響が出ている。

ホルムズ海峡の混乱はエネルギー市場にも波及している。海峡を通過する原油は世界供給の大きな割合を占め、輸送の停滞が価格上昇を招いている。国際指標のブレント原油は再び100ドルを超える水準に上昇し、燃料価格や輸送費の高騰が世界経済に新たなインフレ圧力を与える可能性が指摘されている。

湾岸諸国は戦略備蓄の活用などで供給不足を回避できるとの見方を示しているが、紛争が長期化すれば物流やエネルギー市場への影響はさらに拡大する恐れがある。重要な海上交通路の機能が失われたことで、地域の貿易と供給網は大きな試練に直面している。

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