イランの死刑執行数急増、2025年は1500件、前年の1.5倍に
イラン政府側は治安維持と犯罪抑止を理由に死刑制度の正当性を主張しており、国際社会からの批判に対しては主権国家の司法制度への干渉と反発している。
-1.jpg)
2025年のイランにおける死刑執行件数が前年を大きく上回る見込みであることが複数の人権団体の報告で明らかになった。
ノルウェーを拠点とする人権監視団体「イラン・ヒューマン・ライツ(Iran Human Rights、IHR)」は2025年末までに確認された死刑執行が少なくとも1500件に達し、2024年に確認された975件を大幅に上回るとしている。これは死刑執行件数が前年の約1.5倍に増加したことを示すもので、国内外で懸念が広がっている。
IHRによると、当局は死刑に関する公式統計を公表しておらず、実際の執行件数はこれを上回る可能性が高いという。多くの執行は秘密裏に行われており、死刑囚の通知や公的発表がされないケースも多数あるとしている。また、実際に執行された死刑の多くは薬物犯罪や殺人などの一般犯罪に関連しているが、IHRは政治的な弾圧の一環としても死刑が用いられていると批判している。
報告によると、死刑執行は全国の複数の刑務所で行われている。執行方法は主に絞首刑で、一部は公開の場で行われているとの指摘もある。人権団体は、執行の透明性の欠如や司法手続きの不備を問題視しており、公正な裁判や適切な法的支援が欠けたまま死刑判決が下されるケースがあるとしている。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)や他の国際人権団体も、イランにおける死刑執行の急増に対して懸念を表明している。OHCHRは少数民族や移民が不均衡に死刑判決を受けているとの報告があると述べ、死刑を威嚇や抑圧の手段として使用することへの批判を強めている。
一方、イラン政府側は治安維持と犯罪抑止を理由に死刑制度の正当性を主張しており、国際社会からの批判に対しては主権国家の司法制度への干渉と反発している。しかし、人権団体や国際機関は、イラン国内の政治的自由や市民権をめぐる抑圧の強化と死刑執行の増加には関連性があるとの見方を示している。近年の国内抗議行動や経済的混乱の中で、当局が死刑を用いて反対意見を封じ込めようとしているとの指摘もある。
この状況を受け、国際的な人権団体はイランに対し、死刑執行の即時停止や透明性の確保、公正な裁判の保障を求めるとともに、国連や各国政府にも圧力を強めるよう呼びかけている。死刑制度自体をめぐる国際的な議論が活発化する中で、イランの対応が今後どのように変化するかが注目されている。
