◎トルコは28日、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を支持することに合意した。
トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は30日、スウェーデンとフィンランド両国が誓約を守らなければ、両国のNATO加盟を阻止すると警告した。
トルコは2日前に両国のNATO加盟を支持する覚書に署名したばかりである。
エルドアン氏はマドリードのNATO首脳会議閉会後の記者会見で、「覚書はトルコの勝利であり、両国は要求に応えなければならない」と語った。
トルコはこの両国がトルコでテロ組織に指定されている「クルド労働者党(PKK)」などのクルド人武装勢力を保護していることなどを理由に加盟に反対していた。米国とEUもPKKをテロ組織に指定している。
両国はこの覚書でトルコの過激派引き渡し要請に対する「取り組み」を強化することに合意した。また、トルコに課している武器輸出制限を解除することにも合意している。
エルドアン氏は両国が約束を破れば、トルコ議会は覚書を批准する決議案を否決する可能性があると警告した。「国会が覚書を破り捨てれば、取引はうまくいきません。要は約束を守れということです...」
エルドアン氏は両国が約束を守るまで決議案は提出しないと強調した。
覚書は引き渡しの回数には触れていない。またスウェーデンとフィンランドは欧州犯罪人引渡し条約に基づいてトルコが提出した資料、証拠、情報を考慮し、テロ容疑者の引き渡し要求に対処するとしている。
しかし、エルドアン氏はスウェーデンが73人のテロリストをトルコに送還し、テロ組織に指定されているPKKおよびその関連団体の資金調達と勧誘活動を取り締まることを約束したと主張した。
トルコはPKKとシリアで活動するクルド人民防衛部隊(YPG)を撃滅すると誓っている。
トルコ法務省は29日、「スウェーデンとフィンランドの司法省はPKKや米国に拠点を置くトルコ人のイスラム教指導者ギュレン(Fethullah Gulen)師の組織と関係があるとされる33人の資料を持っている」と報告した。
トルコは2016年7月のクーデター未遂事件にギュレン師が関与したと主張しているが、ギュレン師はこれを否定している。
マドリードの記者団はエルドアン氏に、「スウェーデンは本当にクルド人の身柄引き渡しを約束したのか?」と繰り返し質問した。エルドアン氏は「もちろんだ」と答え、その数は73人に更新されたと説明した。「スウェーデンは身柄を引き渡すと約束しました。まあ、彼らはするかもしれないし、しないかもしれません。その時は決定を下す(拒否権を行使)までです...」
一方、スウェーデン政府はこの覚書が「正当な手続きなし」の身柄引き渡すにつながるという懸念を払拭した。
スウェーデンのアンデション(Magdalena Andersson)首相は30日、公共放送SVTの取材に対し、「政府は常にスウェーデンの法律と国際条約を遵守する」と強調した。「身柄引き渡しには正当な手続きが必要です...」
フィンランドのニーニスト(Sauli Niinisto)大統領は、「覚書に個人名は記載されていない」と指摘し、スウェーデンと同じ見解を示した。「我々は自国の法律と条約を遵守します。身柄を引き渡すか否かはトルコの情報、当局の調査、そして司法の決定に委ねられます...」
NATO加盟には現加盟30カ国の合意が必要である。加盟手続きの中で最も時間がかかるプロセスは加盟30カ国の加盟議定書批准であり、これには議会の承認を必要とし、数カ月かかることも珍しくない。
ドイツのショルツ(Olaf Scholz)首相は加盟議定書の手続きを今週中に開始し、速やかに完了させると述べた。
オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。クルド人は1950年代に欧州に渡り、コミュニティを形成した。