トルコ大統領「シリア民主軍が時間稼ぎ」シリア暫定政府との統合協議

オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1984年に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。
2025年5月8日/トルコ、首都アンカラ、エルドアン大統領(左)とイラクのスダニ首相(AP通信)

トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は29日、米政府の支援を受けるクルド人自治区の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」がシリア暫定政府との統合協議で「時間稼ぎ」をしていると非難した。

エルドアン氏は記者団に対し、SDFに対するトルコの立場を強調。「シリアの統一と領土の保全を維持しなければならず、SDFとシリア暫定政府の合意はタイムスケジュール通りに実施しなければならない」と述べ、SDFをけん制した。

シリア暫定政府は3月、SDFと国家機関を統合することで合意したと発表。シャラア(Ahmed al-Sharaa、通称ジャウラニ)暫定大統領が首都ダマスカスでSDFのアブディ(Mazloum Abdi)司令官と会談した。

SDFは2015年以来、シリア北部のクルド人自治区を支配している。

この合意が履行されれば、シリア北部は暫定政府の支配下に置かれることになる。

トルコ大統領府は29日の声明でSDFに暫定政府との協議を急ぐよう求め、応じない場合は「相応の措置を取る」と警告した。

オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1984年に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。

SDFは米政府の支援を受け、シリアにおけるイスラム国(ISIS)との戦いで主導的な役割を果たしてきた。その先頭に立つのは「クルド人民防衛部隊(YPG)」で、トルコ政府はこれをテロ組織に指定している「クルド労働者党(PKK)」の同盟組織とみなしている。

SDFは昨年末、シリア北部のトルコ国境付近の領土を奪還するため、トルコ政府が支援する「シリア国民軍(SNA)」に対する反攻を開始した。

PKKは5月12日、トルコ政府との新たな和平構想の一環として、解散および武装解除を宣言した。

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