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トルコ大統領「シリアの分断許さない」クルド勢力に警告

シリア暫定政府は3月、SDFと国家機関を統合することで合意した。
2025年5月24日/トルコ、イスタンブール、エルドアン大統領(右)とシリアのシャラア暫定大統領(ロイター通信)

トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は1日、クルド人自治区の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」とシリア暫定政府間の統合合意を実行するための外交努力が失敗した場合、「トルコはシリアの分裂や領土保全への侵害を許さない」と警告した。

エルドアン氏は議会演説で、「我々はシリアの領土保全を維持し、国境を越えたテロ組織の形成を防ぐため、あらゆる外交ルートを活用してきた。忍耐と誠意、常識をもってこれらのルートを継続的に活用している」と語った。

またエルドアン氏は「クルド人がシリア政府との約束を反故にした場合、トルコの立場は明確だ。トルコはシリアでデジャヴが起きることを許さない」と警告。SDFをけん制した。

シリア暫定政府は3月、SDFと国家機関を統合することで合意したと発表。シャラア(Ahmed al-Sharaa)暫定大統領が首都ダマスカスでSDFのアブディ(Mazloum Abdi)司令官と会談した。

SDFは2015年以来、シリア北部のクルド人自治区を支配している。

この合意が履行されれば、シリア北部は暫定政府の支配下に置かれることになる。

トルコはSDFをテロ組織に指定しており、シリア政府と統合されない場合、軍事行動に出ると警告している。

2024年12月にアサド政権が崩壊して以降、シリアとトルコの関係は大きく再編された。アサド体制下では断絶状態にあった両国の外交関係は、政権交代によって新たな局面を迎えたが、それは単純な和解ではなく、利害の対立と協調が入り混じる複雑な関係である。

アサド政権崩壊後、シャラア暫定政権が誕生。トルコが支援してきた「シリア国民軍(SNA)」が北部のクルド地域で影響力を強めた。トルコ政府は、この勢力を通じてシリア国内での発言力を高めようとしており、国境地帯の安全保障とクルド勢力の封じ込めを最優先課題としている。

トルコにとって最大の懸念は、シリア北東部に拠点を置くクルド勢力、特にSDFとその中核である「クルド人民防衛部隊(YPG)」である。トルコはYPGを自国の反政府武装組織「クルド労働者党(PKK)」と同一視しており、国境を越えた軍事作戦を継続している。SDFが影響力を拡大することを警戒し、トルコ軍は複数の越境作戦を実施。SDFの拠点に対して空爆や地上部隊の攻撃を行ったとされている。

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