◎オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。
トルコ大統領府は30日、エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領がロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領と電話会談を行い、シリア北部で計画している軍事作戦やウクライナ侵攻について協議したと発表した。
エルドアン氏はトルコでテロ組織に指定されているシリアのクルド人武装勢力に対する越境攻撃を開始し、国境から30kmの範囲に緩衝地帯を作るとしている。
トルコは2019年、シリアで活動するクルド人民兵部隊「クルド人民防衛部隊(YPG)」に対する軍事作戦を実施し、その後、国境付近の停戦に合意した。
オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。
トルコ政府はYPGや「クルド労働者党(PKK)」をテロ組織に指定し、過去数十年の反乱の責任を取らせるとしている。米国とEUもPKKをテロ組織にしている。
しかし、YPGはシリアのイスラム国(ISIS)と戦う米軍主導の部隊で主導的な役割を果たしており、米国はトルコのシリア侵攻を快く思っていない。
トルコ大統領府によると、エルドアン氏はウクライナ侵攻を終結させる取り組みを主導する用意があるとプーチン氏に伝えたという。
またエルドアン氏は「ウクライナ、ロシア、国連」による紛争地の監視を提案し、トルコも参加する意向を示した。
イスタンブールで3月に行われた停戦交渉は進展しなかったが、トルコは戦争当事国と緊密な関係にあり、停戦を仲介できると期待されている。
エルドアン氏はウクライナの平和を一刻も早く実現し、信頼醸成に向けた措置を講じるようプーチン氏に求めた。
一方、米国のサリバン(Jake Sullivan)大統領補佐官は30日、トルコの大統領首席補佐官と電話会談を行い、両国のウクライナ支援について話し合うとともに、シリアでの行動について注意を促したと明らかにした。
サリバン氏は「トルコに既存の停戦合意を守り、シリアのエスカレーションを避けることが重要と指摘した」と述べた。