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エジプト政府、カタール投資会社とSAF生産プロジェクト契約締結

SAFは主に廃棄物やバイオマス由来の原料から生産されるクリーンな代替燃料であり、従来のジェット燃料と比べてライフサイクル全体での二酸化炭素排出を大幅に削減できるとされる。
カタール、首都ドーハ(Getty Images)

エジプト政府は14日、カタールの投資会社「アル・マナ・ホールディング」と総額2億ドル(約300億円)の持続可能航空燃料(SAF)生産プロジェクトに関する契約を締結したと発表した。この合意はエジプト北東部、スエズ運河経済区での廃食用油を原料とするSAF生産事業を対象としている。

このプロジェクトは3段階で進められる予定で、第1段階では10万平方メートルの敷地を同地区に設け、年産20万トンのSAFの製造能力を有するプラント建設を目指す。エジプト政府はこの取り組みが環境負荷の低減と経済成長の両立につながると説明している。

シシ政権の報道官は声明で、「この契約はスエズ運河経済区におけるカタールの初の工業投資であり、カイロとドーハの二国間関係強化の象徴である」と強調した。

また報道官は「このプロジェクトは両国間の関係が前向きな勢いで発展していることを示すものであり、共同投資と貿易拡大の意思が反映されている」と述べた。

エジプトは近年、財政赤字と対外債務に対処するため、湾岸諸国からの直接投資の誘致を積極的に進めてきた。今回のSAFプロジェクトはその一環であり、近接する中東・欧州市場への輸出を見据えた戦略的プロジェクトと位置づけられている。

SAFは主に廃棄物やバイオマス由来の原料から生産されるクリーンな代替燃料であり、従来のジェット燃料と比べてライフサイクル全体での二酸化炭素排出を大幅に削減できるとされる。このため国際民間航空機関(ICAO)など国際機関が導入を奨励しており、世界的にも注目されている燃料である。廃食用油など廃棄物を有効活用することで環境負荷を抑制し、航空業界の脱炭素化に寄与することが期待される。

実際、エジプトでは廃食用油を原料にSAFを生産する取り組みが既に進行中であり、米国企業と連携した技術導入プロジェクトも進展している。これらの動きは、国内に豊富な廃棄油資源が存在することを背景に、SAFの大量生産と輸出拡大を視野に入れた長期戦略の一部だ。

さらに、エジプト政府はSAFプロジェクトを通じた環境対策と経済刺激策を統合する方針を示している。廃食用油の回収・利用促進、関連インフラの整備、国際的な認証取得支援などを進めることで、産業全体の競争力向上を狙う。また、欧州復興開発銀行(EBRD)など国際金融機関からの支援も期待されており、プロジェクトの資金調達と技術導入が一段と進む見込みだ。

今回のカタール資本の参加により、エジプトは中東・アフリカ地域でのSAF生産拠点としての地位を強化し、航空燃料市場の脱炭素化に向けた取り組みを加速させる可能性が高い。専門家は、こうした国際的な投資連携が今後の航空燃料市場の構造を変える契機になると指摘している。 

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