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ガザ紛争の現状と問題点、飢饉進行で被害拡大 25年9月

ガザ紛争におけるパレスチナ側の死者は5日午後の時点で7万9152人(行方不明者含む)、負傷者は16万2005人となっている。
2025年1月9日/パレスチナ自治区、ガザ地区北部、娘の亡骸を抱く両親(AP通信)

現状

1. 紛争の経緯と死亡・負傷者の規模
  • 2023年10月7日、イスラム組織ハマスらパレスチナ武装勢力がイスラエル国内への奇襲攻撃を行い、約1200人以上のイスラエル人(民間人を含む)が殺害され、約250人が人質として連れ去られた。

  • それに呼応してイスラエルはガザ地区への報復攻撃を開始し、10月27日から地上戦を含む大規模な軍事作戦へと発展。

  • これまでにガザ地区では少なくとも6万4000人を超えるパレスチナ人が死亡し(女性・子どもが半数)、重傷者も数多く報告されている。

2. 人道危機と住民の避難
  • 紛争によりガザ住民の約90%、およそ190万人が避難を余儀なくされており、特にホームや公共施設の多くが使用不能となっている。

  • 家屋の破壊率は極めて高く、2025年7月時点で約80〜90%が損壊または破壊され、数十万人が住まいを失い、シェルターやテント暮らしを強いられている。

3. 医療・栄養・衛生・教育の崩壊
  • 医療施設も壊滅的状態にあり、多くの病院が破壊・閉鎖され、稼働できる施設はわずか。多数の医師・医療スタッフも犠牲となっており、重篤な病人は手当を受けられない状況。

  • 飢餓と栄養失調が急速に広がり、25年8月には飢饉(フェイム)が宣言され、多くが死と隣り合わせにあると報告されている。子どもや妊婦、高齢者への影響は甚大。

4. 避難・移動の困難と支援停滞
  • 人道支援ルートは限定的で、特にエジプト・ラファ検問所経由の供給は制限が多く、十分な物資の搬入が進まない状況。

  • 国連やNGOによる援助や停戦呼びかけが続くが、紛争や封鎖により支援は滞っており、国際社会からの圧力も限定的。

5. 文化・環境への破壊
  • 文化遺産や墓地、学校、宗教施設などが広範に破壊され、ガザの社会・文化的基盤は壊滅状態にある。

  • 爆撃によって大量の瓦礫・有害物質が生じ、環境と住民の健康への長期的影響も強く懸念されている。

6. 国際社会の対応と法的動向
  • 国際司法裁判所(ICJ)には南アフリカが「ジェノサイド(集団虐殺)」を根拠にイスラエルを提訴、国際刑事裁判所(ICC)も捜査権を確認している。

  • 世界中の人権団体や学者がイスラエルの軍事行動が国際人道法違反あるいはジェノサイドの要件を満たすと指摘する声が高まっている。

7. 民間人拘束と司法不在の問題
  • ガザで拘束されたパレスチナ人のうち戦闘員と識別されたのはわずか25%。残り多数は市民であり、裁判も無く長期拘束される「不法戦闘員」扱いが多い。

  • 家族との連絡も断たれ、拘束施設の人権状況や手続きの欠如は深刻な問題であり、拘束を人質交渉の道具に使っているとの指摘もある。

8. 人質問題と暴力の継続
  • 25年9月現在でも48人の人質がガザに拘束され、そのうち約20人のみが生存しているとされ、家族は苦悩を続けている。

  • 人質の映像公開はプロパガンダと非難されており、紛争解決の道筋は見えず、軍事作戦も継続されている。


問題点の整理

  1. 民間人の大量死と被害の偏在:女性・子どもが多数犠牲となり、人道的観点から重大な倫理問題である。

  2. 医療・衛生・栄養崩壊:体制が崩壊し救命・支援が追いついておらず、飢饉・疾病が拡大している。

  3. 家屋・文化資源・環境破壊:再建には膨大なコスト(数百億ドル)と時間が必要。

  4. 人道支援の遮断:封鎖と戦闘により支援が阻まれており、国際圧力は限定的な成果にとどまっている。

  5. 法の支配と国際人権法の軽視:戦争犯罪や人道法違反の疑いが濃厚であり、国際司法の関与が深まっているが、停止には至っていない。

  6. 被拘束市民の人権侵害:法的手続きなしの拘束、家族の情報遮断、虐待の疑念など重大な人権侵害。

  7. 解決の道不透明な人質問題:交渉・軍事的解決とも明確な出口がなく、家族は苦悩を強いられている。

  8. 長期的再建の困難:人道危機の恒久化、世代にわたるトラウマと社会崩壊の可能性。


結論

ガザ紛争は開始から1年半を超えても終結の兆しが見えず、多くの犠牲と被害が累積している。

紛争による人的被害・インフラ破壊は前例のない規模に達し、医療・教育・生活基盤は崩壊した。

さらに、国際社会は停戦や人道支援を訴える一方、犯罪認定や制裁措置の段階へと進みつつある。しかし、現状ではそれらが戦争を止める力とはなっておらず、人道状況は悪化の一途をたどるばかりである。

この紛争は「軍事的勝利」がもたらす利益よりも、市民の生命と尊厳、社会の持続可能性を根底から破壊した。

ガザ再建と和平への道は極めて困難を極めるが、長期的視点に立ち、①即時的な停戦と人道アクセスの確保②法的審査と責任追及③包括的再建と社会支援④人質の解放とトラウマへの支援、これらをバランスよく推進する必要がある。

そのためには、地政学的な対立を超えた国際的連携と市民レベルの合意形成、そして未来を担う子どもたちへの視点が不可欠である。

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