シリア・スウェイダの戦闘収束、アラブ遊牧民が撤退=暫定政府

スウェイダでは先週末、ベドウィンと地元のドルーズ派の治安部隊および民兵が衝突し、銃撃戦に発展。子供を含む多くの一般人が巻き込まれた。
2025年7月20日/シリア、南部スウェイダ県、正規軍の兵士(AP通信)

シリア暫定政府は20日、アラブ遊牧民ベドウィンの武装勢力が南部スウェイダ県から撤退したと発表した。

スウェイダでは先週末、ベドウィンと地元のドルーズ派の治安部隊および民兵が衝突し、銃撃戦に発展。子供を含む多くの一般人が巻き込まれた。

スウェイダでドルーズ派を巻き込む暴力が発生したのは数カ月ぶりであった。

ドルーズ派はイスラム教シーア派の分派のひとつ。世界の約100万人のドルーズ派の半数以上がシリアに住んでいる。

他のドルーズ派のほとんどは1967年の第三次中東戦争でイスラエルがシリアから奪取し、1981年に併合したゴラン高原を含むイスラエルに住んでいる。

イギリスのNGOシリア人権監視団は一連の戦闘で少なくとも638人が死亡し、犠牲者の数は増える可能性が高いと報告している。

暫定政府は衝突発生直後に軍を派遣したものの、ドルーズ派の保護を名目にイスラエル軍が軍事介入したため、いったん撤退。イスラエル政府はその後、シリア軍がスウェイダに立ち入ることを許可した。

現地メディアによると、20日早朝の時点で戦闘は収束したとみられる。

シャラア(Ahmed al-Sharaa)大統領の報道官は20日、治安部隊が状況を鎮静化し停戦を確立したと表明した。

ロイター通信が報じた映像には治安部隊がスウェイダ近郊に集まったベドウィンとみられる民兵の前に立ちはだかり、立ち去るよう求める様子が映っていた。

米国のシリア特使は20日、「スウェイダで衝突した両部族が停戦で合意した」とX(旧ツイッター)に投稿した。

また特使は「包括的な平和への道筋と持続的な緊張緩和の次の基盤は、捕虜の完全な交換であり、その取り組みが現在進んでいる」と述べた。

国連は一連の砲撃や銃撃などにより、7月12日以降、スウェイダ全域で8万7000人以上が避難を余儀なくされたと推定している。

カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは19日、ベドウィンの首長の話しとして、「ドルーズ派と政府が人質の解放に応じれば、捕虜を引き渡す用意がある」と報じていた。

シリアでは4月と5月にもドルーズ派を巻き込む衝突やテロが相次ぎ、数十人が死亡した。

暫定政府は少数民族、特に北東部のクルド人や南部のドルーズ派との政治的和解を達成するのに苦労している。

SHARE:
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします