◎首都テヘランの中心部では「独裁者に死を」と唱えるデモ隊約300人が行進し、道路標識などを破壊した。
イランで20日、道徳警察(モラルポリス)による女性殺害事件に抗議する全国的なデモが暴動に発展し、少なくとも3人が死亡した。
クルド人である22歳のアミニ(Mahsa Amini)さんはヒジャブ(イスラム教の女性が着用するヴェール)を着用しなかったとして、13日に逮捕された。
ソーシャルメディアで拡散した動画には、アミニさんが道徳警察に拘束・殴打されるところが映っていた。警察はアミニさんが逮捕後、心臓発作を起こし死亡したと主張している。
国連は公正な調査を求め、イラン核合意再開を目指す米国も女性に対する「組織的な迫害」をやめるようイランに求めた。
しかし、イラン政府は西側の要求を一蹴し、「外国の工作員が暴動を煽っている」と非難した。
国営イラン通信(IRNA)によると、クルド人が多く居住する西部クルディスタンのデモで市民3人が何者かに殺害されたという。警察はデモ隊への暴力を否定しているが、SNSには「警察がデモ隊を撃った」という投稿が多数寄せられている。
首都テヘランの中心部では「独裁者に死を」と唱えるデモ隊約300人が行進し、道路標識などを破壊した。
イラン政府は「外国大使館がデモを扇動している」と主張し、外国人3人を逮捕したと発表。身元と国籍は明らかにされていない。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は20日、イランの道徳警察がここ数カ月でパトロールを強化し、ヒジャブを着用していない女性を標的にしていると指摘した。
OHCHRの報道官は、「アミニさんに対する拷問と虐待は独立した機関で迅速かつ公平に調査されなければならない」と述べた。
米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官も事件に懸念を表明し、「イラン政府に女性に対する組織的な迫害をやめるよう求める」とツイートした。
イタリア外務省は「卑劣な事件」の犯人を追及するよう求めた。
しかし、イラン外相は西側の要求を蹴っ飛ばし、米国を非難した。「アミニさんの悲劇的な死に関する調査はすでに始まっています。イランは基本的人権を尊重しており、米国を含む人権を敵視し、政治の道具に利用する国とは違います...」
道徳警察はアミニさんが逮捕後、心臓発作を起こしたと主張し、アミニさんが警察署で取り調べを受けているように見えるぼやけた映像を公開した。
アミニさんの父親は地元の独立系メディアに対し、「娘がパトカーに押し込まれ、殴られるところを見た」と語った。
また父親は警察に車内の監視カメラや警察署の映像を公表するよう求めたものの、返事は得られなかったという。
父親はアミニさんの身体にアザがあったと証言している。
政府は抗議デモを抑えるため、アミニさんの遺体を夜間に埋葬するよう圧力をかけたと伝えられている。葬儀はアミニさんの故郷、西部クルディスタンで行われた。
葬儀後、クルディスタン市内で抗議デモが行われ、全国に拡大した。警察はデモに参加したクルディスタンの市民数人を逮捕したと報告している。
一方、クルディスタン当局は20日、武装集団が市民3人を殺害したと報告したが、詳細は不明。
犠牲者の身元は明らかにされていない。1人はイランの治安部隊が使用していない銃器で殺害されたという。しかし、AP通信は情報筋の話を引用し、「2人目の遺体は車内から、3人目の遺体は警察に殺害されたように見える」と報じた。
クルディスタンでは以前にも治安部隊とクルド人武装勢力が衝突している。
抗議デモはテヘランを含む主要都市に広がった。IRNAによると、北部ギラン州のラシュトでは22人が逮捕されたという。