◎サウジの反体制派ジャーナリスト「カショギ氏」は2018年10月にトルコのサウジ領事館で暗殺された。
米国のバイデン(Joe Biden)大統領は15日、サウジアラビアのジッダでサルマン(Crown Prince Mohammed bin Salman)皇太子と拳を突き合わせ、トルコで暗殺されたサウジの反体制派ジャーナリストの事件について提起したと明らかにした。
バイデン氏は2020年の大統領選でサウジを孤立させると約束していたが、世界最大の油問屋であるサウジとのさらなる関係悪化を避けるために和睦を選択したと思われる。
バイデン氏はサウジの反対派ジャーナリスト、カショギ(Jamal Khashoggi)氏が2018年に暗殺された事件を「米国にとって極めて重要なこと」と述べる一方、その他の問題では合意に達したと主張した。
カショギ氏は2018年10月にトルコのサウジ領事館で暗殺された。遺体は見つかっておらず、サウジ裁判所は翌年、容疑者5人に死刑を宣告した。
米中央情報局(CIA)はカショギ氏暗殺にサルマン皇太子が関与したという結論に達したが、皇太子はこの主張を却下。サルマン皇太子の管理下に置かれているサウジ検察も王宮の関与を否定し、容疑者5人の死刑判決で事件は幕引きとなった。
バイデン氏のサウジ訪問はカショギ氏暗殺に関するサウジ政府の主張を正当化することになると批判されている。
バイデン氏はサルマン皇太子との共同記者会見で、「カショギ氏の殺害に関して、私は会談の冒頭でそれを提起し、当時と現在の考えをサルマン皇太子に伝えた」と語った。
「私は率直に、合衆国大統領が人権の問題で沈黙することは米国のあり方や私のあり方と矛盾していると伝えました。私は常に米国の価値観を支持しています」
AP通信は政府筋の話を引用し、「バイデン氏はサルマン皇太子に個人的な責任はないと伝えた」と報じている。
バイデン氏は会談に先立ち、サルマン皇太子と拳を突き合わせ、両国の関係が改善しつつあることをアピールした。世界規模の燃料価格高騰を抑えるためには、アラブ諸国の盟主であるサウジの協力が欠かせない。
しかし、カショギ氏の婚約者はツイッターでバイデン氏のグーパンを批判した。
ワシントン・ポスト紙の発行人であるライアン(Fred Ryan)CEOも、「バイデン氏の行動は握手よりひどく、恥ずべきものだった」と声明を発表している。
カショギ氏はワシントン・ポストのコラムニストを務めていた。
バイデン氏は記者会見で、エネルギー安全保障などについて協議したと述べ、「サウジが今後数週間以内に市場を安定させるさらなるステップを踏むことを期待する」と希望を表明した。
米民主党のシャーマン(Brad Sherman)下院議員はバイデン氏の行動を擁護し、「サウジの増産は人命を救うことになる」とSNSに投稿した。
「原油の価格高騰は貧しい国々の市民が死ぬことを意味します。それは食料は肥料の価格を押し上げ、数百万人を飢餓に追いやり、数百万人の子供を栄養失調に、死の淵に追いやるのです」
SNSにはバイデン氏の行動を擁護するユーザーが散見された。あるツイッターユーザーは「カショギの妻は仇を討てというが、この事件はすでに司法で決着がついている」と批判した。「米国は司法の独立と判決を尊重します...」
ある共和党支持者はフェイスブックに、「バイデンの支持率はガソリン価格と反比例するので、サウジは増産を見合わせるべきだ」と投稿している。「民主党の左翼大統領はサルマンにいちゃもんをつけ、増産に失敗するでしょう...」
一方、サウジはこれまで禁止されていたイスラエルの航空機の領空通過を許可すると発表した。イスラエルはサウジとの外交関係樹立を希望している。