シリア首都で国際ブックフェア、文化・政治の転換を象徴する場に
このブックフェアでは、かつてアサド政権下で禁止されていたイスラム主義思想の書籍や、長年抑圧されてきたクルド文化関連の出版物が堂々と並び、訪れた人々の関心を集めている。
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シリアの首都ダマスカスで開かれている「2026年ダマスカス国際ブックフェア」が、文化・政治の大きな転換を象徴する場となっている。このブックフェアでは、かつてアサド政権下で禁止されていたイスラム主義思想の書籍や、長年抑圧されてきたクルド文化関連の出版物が堂々と並び、訪れた人々の関心を集めている。これは長年シリアを支配したバース党による世俗的統治が崩れ、イスラム主義勢力が影響力を強めた新たな政治状況を反映している。
ブックフェアは2月6日に始まり、今回がアサド政権崩壊後初めての開催となる。会場にはかつて所有や販売が重罪とされていたラディカルなイスラム思想家サイイド・クトゥブ(sayyid quṭb)の著作が目立つ位置に並び、人気を集めている。クトゥブは1960年代にエジプトの投獄経験の中で多くを書き残し、その思想はイスラム運動に影響を与えた人物とされるが、旧政権下ではこうした書籍の所有は投獄や死刑の対象となることもあった。
フェアの運営責任者はロイター通信の取材に対し、「新しいシリアでは、憎悪を煽るものや社会の平和を損なうもの、アサド政権を賛美するものを除けば、どの本も禁止されていない」と述べ、これまでの情報統制からの脱却を強調した。会場にはイスラム主義の法令集や、旧支配体制の批判を含む文献も見られ、出版物の多様化が進んでいることを示している。
一方で、ブックフェアでは元アルカイダ幹部の回顧録など議論を呼ぶタイトルも販売されている。たとえば、アルカイダの元高官の回想録は過激主義の歴史や思想に触れる機会を提供している。しかし、イラク政府からの要請を受け、一部の過激派に関連する音声資料集は展示から外された。
会場の一角には、伝統的なクルド衣装を身につけたスタッフが配置されたクルド文化パビリオンも設けられ、クルド語の詩集や1932年発行のクルド雑誌の復刻版などが展示されている。クルド文化はアサド政権時代には紹介されることがほとんどなく、関係書籍は密かに流通するか隠れて読まれるのが常だったが、現在は公の場で紹介されている。これは新政府とクルド勢力との和平合意に伴い、クルド語が国の公認語の一つとして認められたことと関係している。
フェアを象徴する展示について、長年人権擁護運動に携わってきた男性は、「これはシリアがかつての思想的な抑圧から脱却し、多様な考えや世界の思想に開かれる第一歩を示している」と評価した。かつて抑圧されていた著作が堂々と並ぶ光景はシリア社会の変化を象徴し、国内外からの注目を集めている。
このブックフェアは新しい政治秩序が文化・知識の表現にどのような影響を与えるのかを測る試金石となっており、シリア社会の今後の変容を見極める上でも重要なイベントと位置づけられている。
