◎カブールのパンの価格はこの数カ月で約2倍に跳ね上がった。
国連や世界の主要メディアはイスラム過激派組織タリバンの支配下に置かれたアフガニスタンで壊滅的な飢餓が発生し、子供を含む数百万人が餓死または栄養失調に関連する病で死亡すると警告している。
AP通信によると、首都カブールの医療機関で取材に応じた女性の子供(2歳)の体重は約5kgだったという。2歳の適正体重は12kg~13kgぐらい。
国連は9月、「この冬、アフガニスタンで生活する100万人の子供が死亡する可能性がある」と警告した。8月30日に終結した米国史上最長の戦争であるアフガニスタン戦争の総死者数は90万人前後と推定されているが、下手するとこの冬だけでそれ以上の子供が死ぬことになる。
地元メディアによると、カブールのパンの価格はこの数カ月で約2倍に跳ね上がったという。しかし、西側諸国の撤退後、銀行は閉鎖され、経済は停滞し、貿易は滞り、タリバンの主要な資金は凍結された。また、深刻な干ばつとコロナウイルスの感染拡大も危機に拍車をかけている。
国際通貨基金(IMF)などによると、アフガニスタンのGDPは今年、最大30%縮小する可能性があるという。対外援助はアフガニスタンのGDPの約45%、年度予算の約75%を占めていた。この結果、来年までに人口の約97%が貧困に陥る可能性があるという。
西側諸国は世界銀行を通じてアフガニスタンに2億8,000万ドル(約320億円)を提供することに同意した。なお、資金はタリバンではなく国連機関である世界食糧計画(WFP)とユニセフに直接送金される。
しかし、送金は年末頃に行われる予定で、家族の手元に食べ物が届くのは年明け以降になると見込まれている。
多くの母親が子供と家族のために働き口を探しているが、タリバンの影響で仕事に就くことは難しくなった。
テレビ局で働いていた女性はAP通信の取材に対し、「職場に戻りたいと雇用主に伝えたが、拒否された」と述べた。「タリバンは女性を雇用した会社に制裁を科します。雇用主は死にたくないと言いました」
別の女性は「娘を秘密の学校に通わせている」と語った。首都カブールを含む主要都市の住宅街には、ボランティアの教師が運営する学校(塾)が複数存在すると伝えられている。
タリバンは西側諸国の要請に基づき、女性の権利を含む基本的人権を尊重すると約束しているが、特に地方都市の戦闘員は女性を差別し、ひどい地域になると外出すら許可されないという。一部のメディアは外出した女性が暴行や虐待を受けたと報じている。
アフガニスタンの経済は米国とNATO(北大西洋条約機構)が撤退する以前から苦戦していたが、この3か月間の経済崩壊は常軌を逸しており、近代史上最悪と呼ぶ専門家もいる。
アフガニスタンの気候は地域によって大きく異なるものの、11月~2月はおおむね寒く、地域によっては氷点下10℃近くまで下がることもある。首都カブールの12月の平均気温は1~2℃、1月は氷点下1~1.5℃。