◎タリバンは米軍とNATO軍の完全撤退発表以来、支配地域を確実に拡大している。
アフガニスタンの現地メディアによると、アフガン軍は南西部の主要都市に侵攻したタリバンと激しい戦闘を繰り広げているという。
タリバンは先日、西部ヘラート州の州都ヘラート、南西部ヘルマンド州の州都ラシュカルガー、南部カンダハール州の州都カンダハールの一部に侵攻した。
ラシュカルガーでは米軍とアフガン軍による空爆作戦が続いているが、タリバンは地上部隊に猛烈な攻撃を仕掛け、領土の奪い合いになったと伝えられている。
AFP通信などによると、タリバンはこれらの主要都市のテレビ局を占領し、侵攻と戦闘に巻き込まれた住民数千人が避難を余儀なくされたという。
アフガニスタン政府は全土で猛威を振るうタリバンの侵攻を抑えるために、少なくとも数百の部隊を各地に配備した。タリバンは米軍とNATO軍の完全撤退発表以来、支配地域を確実に拡大している。
ヘルマンド州は米軍の軍事拠点のひとつであり、タリバンに征服されれば、アフガン軍の戦力と士気に大きな影響を与えると懸念されている。州都ラシュカルガーの戦況は不明だが、侵攻を許せば、タリバンは2016年以来初の州都征服を達成することになる。
市内のアフガン軍司令官は英BBCニュースの取材に対し、「タリバンの勝利は世界の安全保障に壊滅的な影響を与える」と警告した。「これはアフガニスタンの戦争ではなく、世界の自由と民主主義をかけた戦争です...」
アフガニスタンの情報省は2日、ヘルマンド州の11のラジオ局と4つのテレビ局がタリバンの侵攻の影響で放送を停止したと発表した。
アフガニスタン第二の都市、カンダハール州に侵攻したタリバンは1日、地域の主要空港に大規模なロケット弾攻撃を仕掛け、その後も侵攻作戦を継続した。
カンダハール州は南部の主要都市であり、ここを征服されれば、タリバンは北と南の重要地点を抑えたことになる。タリバンは先月、北部地域やイランとパキスタンの国境検問所を含む重要地点を占領した。地元メディアは、「タリバンは全領土の約50%を支配下に置いた可能性がある」と報じた。
ヘラートの街頭で撮影された映像はソーシャルメディアで共有され、政府軍を支持する住民たちは「アッラーフ・アクバル(アッラーは最も偉大である)」と叫び、タリバンの敗北を祈った。
一方、アフガニスタンのアシュラフ・ガニー大統領は1日、米軍は一部地域でタリバンの侵攻が激化しているにもかかわらず突然撤退したと非難した。ガニー大統領は議会演説で、「(米軍の)撤退は敗北につながるだろう」と述べ、タリバンに押されていると示唆した。
米兵はほぼ全ての地域から撤退したが、米軍の戦闘機はアフガン軍を空から援護している。現地メディアによると、ラシュカルガーの空爆は2日遅くまで続いたという。
ホワイトハウスは2日、タリバンの侵攻が激化していることを認めたうえで、アフガニスタンの難民受け入れプログラムを拡大し、新たに数千人を受け入れると発表した。また、パキスタン国境近くの町スピーン・ブールダクで拘束された民間人に対する「虐殺」は戦争犯罪であり、いかなる理由があろうと容認できないとタリバンを厳しく非難した。
タリバンはアメリカの告発を却下している。