石油各社がイラク政府、クルド自治政府と石油輸出再開で合意
これにより、2023年3月以来停止していたイラク・トルコ間パイプラインを通じ、1日当たり約23万バレルの原油輸出が再開される見込みだ。
が管理するパイプライン(Getty-Images).jpg)
イラク北部のクルド地域政府(KRG)で操業する8社の石油会社が、中央政府およびKRGと石油輸出再開に向け基本合意に達した。現地メディアが24日に報じた。
これにより、2023年3月以来停止していたイラク・トルコ間パイプラインを通じ、1日当たり約23万バレルの原油輸出が再開される見込みだ。
クルド石油産業協会(APIKUR)は声明で「この枠組みが署名・実施されれば、輸出は数日中に再開される見込みであり、同時に長期的な取り決めに向けた道筋も示される」と述べた。輸出再開には議会の承認が必要である。
APIKURはクルド地域で事業を展開する8つの国際企業を代表している。
ロイター通信は情報筋の話しとして、「ノルウェーのDNOとイギリスのジェネル・エナジーの2社は、まだこの合意書に署名していない」と報じた。
KRGは独自の石油政策と資源開発戦略を展開していることで知られる。KRGはイラク連邦政府との権限分配を巡る複雑な関係の中で、地域の石油資源を活用して経済的自立を図ろうとしてきた。
クルド地域はイラク国内で豊富な石油埋蔵量を有しており、特にスレイマニヤ、ドホーク、アルビール周辺の油田が主要な生産拠点である。
KRGは2007年以降、独自の石油契約(PSA)を外国企業と締結し、石油の探査・生産を進めてきた。これにより、北部の油田開発は国際的な石油企業の資本と技術を導入する形で加速した。
KRGの契約形態は連邦政府が管理するイラク国営石油会社(INOC)とは異なり、収益の一定割合を企業に還元するPSA方式を採用している。これにより、KRGは独自の財源を確保できる一方、連邦政府との間で法的・政治的な対立を生む要因にもなった。
石油の輸出経路もKRGの戦略上重要な要素である。KRGはイラク中央政府を経由せずにトルコのジェイハン港を通じて原油を輸出しており、これにより地域の財政的独立性を強化している。しかし、この独自輸出はイラク連邦政府から度重なる批判を受けており、輸出量や契約の透明性を巡る対立が続いている。加えて、KRGの石油収入は予算の大部分を占めるため、原油価格の変動や輸出障害が地域経済に直接的な影響を与える構造となっている。
KRGの石油政策は経済的自立の追求と政治的交渉力の強化という二重の目的を持つ。一方で、連邦政府との権限争い、外国企業との契約条件、輸出ルートの確保など、複雑な課題が存在する。今後もKRGの石油事業は地域の政治安定、イラク国内の権力バランス、国際的な石油市場の動向に密接に影響されることが予想される。