私はグレタ／世界一有名な気候活動家のドキュメンタリー映画

グレタ・トゥンベリ

ヴェネツィア国際映画祭で初演された10代の気候活動家、「グレタ・トゥンベリ氏」に関するドキュメンタリー映画は、コロナ危機で忘れ去られた気候変動および低炭素社会実現に向けた取り組みの重要性を思い出させてくれた。

9月4日、世界で最も有名になった10代の気候活動家、グレタ氏に関するドキュメンタリー映画が、ヴェネツィア国際映画祭で初演された。

作品を観賞した人々は、世界が対処しなければならない危機はコロナウイルスだけではないことを改めて思い出し、その問題は消えていないと改めて痛感させられた。

グレタ氏は、「I Am Greta」の上映に合わせて、学校からヴェネツィアの会場にビデオ会議で出席した。

同作はスウェーデンの学生が初めて学校をストライキし始めた頃から、世界中の政治指導者に向けて炭素の排出抑制を求めるまでの戦いを描いている。

監督および撮影を務めたのはネイサン・グロスマン氏。同作では、2019年にニューヨークで開催された国連気候行動サミットに出席すべく、大西洋をヨットで横断した2週間の秘蔵映像も含まれている。

協力者の助けを受けヨットによる2週間の船旅を開始したグレタ氏は、ホームシックになり愛犬を恋しく思っていると叫んでいた。

ヨットが波に激突した時、「会議での講演を決めたのは私自身。私は自分で判断し、今ここにいる。私は飛行機に乗れないからニューヨークに行けないと思っていた。二人（オーストラリア人のカップル）には本当に感謝している」と涙を流した。

その後、2019年に立ち上げた「#FridaysForFuture」の大規模デモ映像などがグレタ氏の視線で描かれている。

グレタ氏や気候変動のニュースが世界を席巻したのは昨年のことである。コロナウイルスの登場でこの話題は雲散霧消し、一昔前のことのように思われている。しかし、人間がそれを勝手に忘れたとしても、地球は忘れてくれない。

17歳になったグレタ氏は気候危機を忘れないよう世界に求め、「環境キャンペーンおよびでデモ活動は、コロナウイルスの感染予防対策を遵守し、安全かつ誰も危険にさらさない方法で継続する」と宣言した。

1年におよぶ学校ストライキを終えたグレタ氏は、現在も毎週金曜の早朝、マスクを着用したうえで、環境保護を呼びかけている。

グロスマン監督は、メディアの注目を一身に浴びたグレタ氏およびグレタ氏の家族と非常に親密な関係を構築していた。

結果、グレタ氏の近くで活動の様子を連日撮影することができ、10代らしい感受性豊かな少女の肖像を提供する映画が誕生したのである。

ヨーロッパへの長い電車の旅の映像では、グレタ氏が抱えていたプレッシャー、家族への想い、気候変動枠組み条約締約国会議（COP25）の演説準備で悩む姿などが記録されている。

この映画は、グレタ氏に対する非難や嘲笑を覆し、国連気候行動サミットやCOP25のスピーチを自分で考えたと証明し、そして環境危機だけでなく、家族や愛犬、友人のことで悩みつつも、いろんな問題を乗り越えキャンペーンに邁進する彼女の本当の姿を明らかにした。

しかし、世界の注目が爆発的に増加したことで、グレタ氏の中に蓄積していた様々な想いが爆発、彼女を悩ませることになった。

グレタ氏は、グロスマン監督に「国連総会の場で世界の指導者に向かって怒りっぽくナイーブに叫べば子供とみなされ、相手にされない」と指摘されたことを認めた。

環境活動家

グロスマン監督の指摘に対しグレタ氏は、「私は難しいスピーチをするタイプの人間ではない。グロスマン監督は私を恥ずかしがり屋のオタクのように撮影してくれた。それは正しい。映像の中にいる私は、本当の私だ」と述べた。

完成した作品を見たグレタ氏は、グロスマン監督にほんの少しだけリクエストをしたという。しかし、カットは一切求めず、映像を追加してほしいというものだった。

グレタ氏はグロスマン監督が撮影していたことを意識していなかったいう。そして、なぜ自分を撮影するのか疑問に思うこともあったと述べた。

「撮影はドキュメンタリー映画らしく巨大なセットや機材を必要とせず、あっさりしたものだった」とグレタ氏は語った。

グレタ・トゥンベリ氏：
「私たちは自分の身体が健康であるように、地球もずっと健康だと思っている。しかし、それが間違いであることに気づき、行動しなければ、取り返しのつかない事態を招く」

「今、行動しなければ、そのツケは私たち、次の世代、その次の世代が背負うことになる。私は自分を裏切りたくない」

2020年初頭、グレタ氏はイギリスの人気番組、BBC Radio 4にポッドキャストで出演した。

同年1月、グレタ氏はスイスで開催された世界経済フォーラムのメンバーに加わり、好敵手、ドナルド・トランプ大統領と対峙した。

周囲の期待通り、トランプ大統領は10代の少女に噛みついた。

両者は会議で講演し、全く異なるメッセージを世界に発信。トランプ大統領は60近く年の離れたグレタ氏に対し、「バカげた占い師。もっと楽観的になれ」と非難した。

3月、欧州議会の環境委員会は、「コロナウイルスの危機を無視した気候変動への取り組みに関するEUの計画」を厳しく非難。欧州議会のメンバーに「降伏しろ」と告げた。

この発言に対しグレタ氏は、「コロナウイルスを言い訳にするな」と怒りを爆発させ、「デジタルストライキ計画」を発表した。

世界の一部の政治家は、「口うるさい少女が学校に戻った」と大喜びしているかもしれない。

彼女の発言は具体性に欠けている。しかし、10代の少女に「気候危機解消に向けた具体的なプランを上げてみろ」と指摘・非難してはいけない。トランプ大統領は、自分が10代だった時のことを思い出すべきだ。

グレタ氏と気候危機および低炭素社会実現に向け行動する環境活動家たちの戦いは始まったばかりである。