マスク男子はクールじゃない!
ブラジル在住のモニカは、マスク着用を拒否し続ける夫のエドワルドに三下り半を突きつけ、実家に帰った。
二人には7歳の息子がいる。モニカは家族が罹患することを恐れ、保健当局や世界保健機関(WHO)の指示に従い、マスクを着用し始めた。しかし、エドワルドは心配する妻の助言を無視し、マスクの着用を頑なに拒み続けた。
モニカはBBCの取材に対し、「私は喘息を患っており、コロナウイルスに感染すると重症化しやすいと注意された。しかし、夫は息子や私のことなど気にせず、毎日無防備な状態で外出し続けた。夫は混雑するエリアには近づかないから大丈夫だと信じ、息子と私を危険にさらしているとは露ほども考えていなかった」と語った。
モニカのケースは、パンデミックの間に広く観察されてきたジェンダーの格差を表している。
ある研究によると、男性は女性よりも個人用保護具やマスクの着用に消極的だという。これはSARSやMARSの流行時にも見られた結果であり、特にアジアを除く地域で顕著に表れる兆候である。
ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月19日時点の世界のコロナウイルス累計感染者数は1,450万人を超え、60.5万人以上の死亡が確認された。なお、大多数の国で男性の死亡率が著しく高くなっていることは周知の事実である。
以前、WHOはマスクを着用してもウイルスの蔓延は阻止できないと考え、一般人(医師、患者は除く)の着用を推奨していなかった。しかし、ウイルスの飛沫を防ぐ効果が世界中の研究で証明され、考えを撤回。ガイドラインを見直し、マスク着用は世界の常識になった。
マスクはコロナウイルスと戦うための防具として認められた。しかし、それならなぜ、一部の男性はマスク着用を頑なに拒むのだろうか。
ミドルセックス大学、経済学部のバレリオ・キャプラロ博士と、バークレー数理科学研究所のエレーヌ・パルセロ博士は、男性の行動を分析、研究している。
二人はアメリカの男女約2,500人を対象としたマスクに関する意識調査を行った。結果、男性は女性よりも明らかにマスクを嫌い、それを着用することは「恥ずべきこと」「クールじゃない」「弱さの象徴」などと表現した。
キャプロス博士はBBCの取材に対し、「この傾向は、マスク着用を義務付けられていない州で顕著に表れた。しかし、大半の男性たちがマスクの重要性に気付いている。それなのに、恥ずべきこと、クールじゃないと考え、着用を拒否していた」と述べた。
キャプロス博士たちは2,500人の男女に対し、友人や知人と会う時や社会活動従事時にマスクを着用するかと質問した。すると、「屋外に出る際はマスクを着用する」と回答した女性は、男性の約2倍に達したという。
「男性は女性に比べるとマスクを着用したがらない傾向にある。着用を拒否する男性の多くが、自分だけは疾病(ウイルス)の影響を受けない、という信じていた。この考えは最悪の結果を招いた。公式統計によると、コロナウイルスは、女性より男性に深刻な影響を与えることが示されている」と述べた。
また、基本的な衛生対策のひとつとして推奨される手洗いについても、男性の意識の低さが目立つ結果となった。博士たちの調査によると、女性の65%、男性の52%が定期的に手を洗うと回答した。
パンデミックの震源地、アメリカでは感染予防対策が高度に政治化されている。
ドナルド・トランプ大統領を応援する共和党支持者は、民主党支持者よりマスク着用率が低いという調査結果も出ている。6月25日にピューリサーチセンターが発表した調査報告によると、民主党支持者の76%がマスクを着用しているのに対し、共和党は53%にとどまったという。
しかし、共和党支持者の中でマスク着用を肯定する女性は全体の68%とかなり高い。ここでも男女間の格差が如実に表れる結果となった。
女性はマスクを信じる
コペンハーゲン大学、行動科学のクリスティーナ・グラバート博士は、マスク着用とジェンダー格差について、「想定通り」と述べた。
グラバート博士はデンマークの首都、コペンハーゲンでマスクの着用調査を行った。結果、女性がより注意深くなっているのに対し、男性はリスクを好む傾向にあることが分かった。
2009年、メキシコで猛威を振るった豚インフルエンザの蔓延時にも、マスク着用率は女性の方が圧倒的に高かったという。また、マスク着用に肯定的なアジアでさえ、一定レベルのジェンダー格差は存在する。
男性は女性より自信過剰かつ注意力が欠如しているのだろうか?
その通りである。残念なことに、”トータル”で見ると、男性の方が注意力不足であることは明らかだ(恐らく自信過剰でもある)。
自動車保険プロバイダーは、男性より女性の保険料を安く設定している。ただし、男性の方がたくさん運転することも事実。なお、交通事故件数(世界トータル)では男性が女性に大差をつけている。
もうひとつの興味深い例が、悪名高い”ダーウィン賞”である。これは、最もバカげた死に方をした者に送られる有難くない賞である。1995年~2014年までのデータを見ると、男性の受賞率は90%に達し、ここでも女性を圧倒していることが分かった。
ロンドンで活躍するバレリオ・キャプラロ博士は、自分自身がマスク着用に否定的だったと認め、考えを改めることに苦労したと述べた。
キャプラロ博士はBBCの取材に対し、「世界的なロックダウンが始まる前、私はパンデミックのさなかにあったイタリアを訪ねた。私はマスクを着用せず、冷静に社会的距離を保ち、人々との接触を避けた。私はマスクを着用しなくても大丈夫だと自分に言い聞かせ、誰かに迷惑をかけることなどあり得ないと信じていた」と述べた。
その後、キャプラロ博士は世界中にパンデミックが拡散する様子を見て、屋外では必ずマスクを着用することに決めた。
世界中でマスク着用の義務化が進んでいる。しかし、自由や権利を訴え、頑なに反対する者も多い。トランプ大統領やブラジルのボルソナロ大統領がその筆頭である。
リーダーが誤った主張を拡散することで、それを信じる男性(女性もいることはいる)がマスクを捨て、コロナウイルスに感染し、パンデミックを引き起こした、と反省するべきだろう。
クリスティーナ・グラバート博士は、男性にターゲットを絞った啓発キャンペーンが効果を発揮するかもしれない、と指摘する。
博士は、「男性の方がコロナウイルスに苦しめられている」という統計結果を開示し、世界規模のキャンペーン「家族を守るためにマスクをつけなさい」を行うべきだ、と述べた。
夫のエドワルドに三下り半を突きつけたブラジル在住のモニカは、感染爆発の真っただ中にいる。
エドワルドは妻と息子の命を守ると誓い、考えを改めた。そして、現在も外出時のマスク着用を徹底し、感染予防に努めている。
「夫は今でも健康な人はコロナウイルスに感染しないと信じている。しかし、家族のため、という理由で行動を改めた」
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訳:いいからマスクしやがれ!!