米中ニンニク貿易戦争

2019年、トランプ大統領は中国とのニンニク貿易戦争を制した

アメリカのニンニク生産者は、25年以上続いた長いトンネルから脱出したのである。

トランプ大統領は中国から輸入されるニンニクに2回目の関税を課し、アメリカ産の需要を大きく押し上げることに成功した。

カリフォルニア州を拠点とするクリストファーランチ社のケン・クリストファーCEOは、「貿易戦争に勝者がいない、という考えは間違いである」と強く主張した。

さらに、「カリフォルニア州のニンニクは、粗悪で安い中国産に圧倒されていた。しかし、トランプ大統領が中国に対する関税を強化したことで、敵は低価格という競争優位性を失った」と付け加えた。

アメリカのニンニク栽培者は、1990年代初頭以来、低価格で市場を席巻した中国産に圧倒されていた。

中国メーカーは生産コスト以下で商品を販売する(赤字は他の商品で回収)ことも珍しくなく、強烈な不当廉売(ダンピング)に対抗できる栽培者はいなかった

アメリカ政府はニンニク販売の実態調査を行い、1994年に中国の一部メーカーが「公正取引価格未満」で商品を販売していたことが判明した。

結果、ルールを犯した中国メーカーは、377%という巨額のペナルティを受けることになった。しかし、中国当局はルールの抜け穴を発見、新たなダンピング取引を確立した。

クリストファーCEOは中国メーカーとの戦いを「モグラたたき」に例え、低価格な中国産ニンニクがアメリカに殺到する様子を黙って見ていることしかできなかった、と述べた。

中国のダンピング攻勢は一層激しくなり、1990年代に存在したアメリカの商業用ニンニク農場12社は、3社にまで減少した。

トランプ大統領が課した関税に抜け穴はない。

中国産ニンニクに課せられていた関税は2018年9月の時点で10%。それが2019年5月には25%まで引き上げられたのである。

クリストファーCEOは、トランプ大統領が課した25%の関税を大ナタと呼び、中国のダンピングニンニクメーカーを破壊したと述べた。

1990年代、クリストファーランチ社はアメリカの主要ニンニク生産者のひとつだった。その後、中国産の勢いに押されるも、数少ない国産メーカーのひとつとして上質なニンニクを提供し続けている。

現在、同社は年間約4,500万kgもの球根を収穫し、国内の全ニンニク消費量の30%以上を供給している。

クリストファーCEOは、中国産ニンニクへの関税が大きく引き上げられたことで、社の売り上げが急増したと語った。

「当社の毎週の売上高は、前年に比べ6%~23%の間で上昇し続けている。パーセントで考えると少なく感じるかもしれないが、数億ドルの売上が数パーセント上昇すれば、収益にとてつもない影響を与えるだろう」

中国産ニンニクへの関税は、国産メーカーにどれだけのプラス効果をもたらしたのか。

2018年8月にボストンで販売された中国産白ニンニク(13.6kg)の価格は25ドル~30ドルだった。なお、同サイズのカリフォルニア産白ニンニク(13.6kg)の価格は68ドルだった。

関税適用時点。中国産白ニンニク(13.6kg)の価格は52ドル~55ドルに上昇した。これに対しカリフォルニア産ニンニクは70ドル~74ドル。

まだ中国産の方が安いものの、その差は一気に縮まった。結果、品質に勝るアメリカ産の売り上げが大きく上昇したのである。

米中ニンニク貿易戦争

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貿易摩擦とトランプ

カリフォルニア州で農場を営んでいたジャック・ベッセイ氏は、中国産への関税が引き上げられる前に、ニンニク栽培から撤退した。

ベッセイ氏はBBCの取材に対し、「中国産の価格には到底太刀打ちできず、数年前にニンニク栽培をやめた。難しい決断だったが、父から受け継いだものを守るためには仕方なかったと考えている」

「父、祖父、曾祖父がニンニクの栽培に情熱を傾けてきた。しかし、このビジネスを5代目まで引き継ぐことは、当時の情勢では難しかった」と述べた。

ベッセイ氏の農場ではキャベツやカリフラワーなどの野菜と一緒に、ニンニクを約100年間栽培し続けてきた

そして、ベッセイ氏の農場で最も多くの収益を生み出してきた作物がニンニクだった。

「我々の農場を支えてきたのはニンニクだった。実ひとつ当たりの大きさは小指より小さいが、年間収益の50%を稼ぎ出してくれた我が家の大黒柱だった。しかし、安価な中国産が市場に出回ると、国産ニンニクが全く売れなくなった。ニンニクは私たちの全てだったが、潮時だと思った」

商務省、元国際貿易副長官のフランク・ラビン氏は、中国の急激な経済成長と輸入業者の台頭、そして大量発生が貿易摩擦の主要因だったと説明した。

「中国メーカーは恐ろしい勢いで増殖した。我々はそれを認可する。結果、作物の大量輸入とダンピングが発生した。中国は数の力で米国関税を圧倒し、チェック(発見)する間を与えなかった」ラビン氏は語った。

安いから」という理由で際限なく中国産を輸入した結果、アメリカ国内のニンニク農家は苦境に立たされたのである。

クリストファーランチ社のケン・クリストファーCEOは、トランプ大統領が課した関税について、「中国産ニンニクを輸入するためには、必ず関税を通過しなければならない。逃げ道もダミー会社も関係なく、一律に課税されるため、あれこれ悩まずに済むだろう。大統領の一撃はゲームを一瞬でひっくり返した」と語った。

また、クリストファーCEOは、トランプ大統領の厳格な関税政策を頭ごなしに否定すべきではないと主張した。

しかし、貿易の専門家は、国内産の高いコストが消費者に転嫁されるかもしれない、と警告している。

テマセク財団センターの貿易交渉官を務めるデボラ・エルムス氏はBBCの取材に対し、「関税という高い壁に守られている国内企業は、外国勢を締め出すことが当たり前と考えている」

「外国勢と競争を行わずに済むと、国内の限られたメーカーと競争力の低い争いをすることになる。結果、競争に力を入れなくても、ものが売れる」

「限られた競争相手との緩い戦いは、不正につながる。さらに、高コストの商品を高価格で販売しても、外国勢商品が締め出されているので、簡単に売れる。競争力の低下したメーカーは、いずれ衰退するだろう」と述べた。

2020年8月21日、民主党全国大会の全日程が終了し、ジョー・バイデン氏が民主党大統領候補の受諾演説を行った。

バイデン氏は演説の中でライバルについて、「彼はあまりにも多くの怒り、恐怖、分裂を生み出した」と語った。

バイデン氏の熱烈な演説は、ほぼ半世紀にわたる彼の政治キャリアの中でも最高と称された

一方、挑戦状を突きつけられたトランプ大統領は、バイデン氏の故郷、ペンシルベニア州スクラントンで演説を行った。

その中でトランプ大統領は、ライバルのことを「スロージョー」「スリーピージョー」と嘲笑し、「ジョーはペンシルベニアの友達ではない。彼は国際貿易協定、パリ協定、クリーンエネルギー計画を通じて、アメリカの雇用をコナゴナに破壊した」と非難した。

バイデン氏の演説についてトランプキャンペーンチームは、「急進的な極左の駒」と指摘。「バーニー・サンダースの支持層を味方につけたかったようだが、見事に失敗した」とコメントした。

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