パワーレズビアン

日本人サラリーマンの平均年収は、男性が約520万円(月収約30万)、女性が約270万円(月収約17万円)ほどらしい。

一方、ニューヨーク州の平均年収は約6万9,000ドル(730万円:月収約45万円)。日本人の平均年収より上、東京都と比較すると大差はなかった。

マンハッタンで生活していた時、「格差社会ここに極まる」と感じたことを鮮明に覚えている。

マンハッタンでも、ウェイター、ピザの配達人、清掃員など、給与の決して高くない方たちは、生活費をギリギリまで削り、家賃やローンの支払いで切羽詰まっている。

これに対し、金融業界で働くエリートや会社を立ち上げバリバリ働く方たちは、一般人には考えられないような金額をサクッと稼ぎ、立派なタワーマンションの上階で裕福に暮らしている。

ちなみに、私は前者に属する。ニューヨークの家賃の高さにウンザリし、貯金もほとんどなかったので、女性と付き合う時は金遣いの荒くないタイプを無意識に選んでいた。

前置きが長くなった。マンハッタンには驚異的なパワーで金を稼ぎだす女性が一定数存在する。割合は全体の1割にも満たないかもしれないが、日本人サラリーマンの常識をはるかに超える彼女たちのパワーを初めて体感した時、私は愕然とした。

広告会社を経営するニーナ(仮名)は、男たちを早口でまくし立てるタイプである。年収は200万ドルぐらい(本人談)。家賃8,000ドル(約84万円)の物件を借りていたと記憶している。

ニーナは「パワーレズビアン」だった。これはその名の通り、驚異的なパワーで金をバリバリ稼ぐすレズビアンである。

私は初めてニーナと対面した時、強烈なプレッシャーと目力に圧倒された。当時のことを彼女に説明すると、「私は男を”クソったれ”と決めつけている。たから敵意むき出しで圧力をかける。ただし、女性のことを同じ人間として対等に扱う男だと確信できれば、敵意は向けない」と言った。

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生半可な男は食いものにされる

当時、私は驚異的なパワーでバリバリ稼ぐパワーレズビアンと接する機会が多々あり、いろんな失敗を繰り返しながら以下の対応策を編み出した。

【パワーレズビアンとの付き合い方】
①ビジネスの場では異性であることを一切意識しない。男と思って話しかける。
②かしこまり過ぎない。
③間違いを指摘されたら一切言い訳せず過ちを認める。
④自分が100%正しいことを無理やりねじ曲げようとしたら、死んでも引かない。
⑤ビジネスの場以外では、友人として穏やかに接する。

パワーレズビアンは、男から女性として見られることを極端に嫌う。ニーナに言わせると、「男と女は対等。性器の形が違うだけで、他は何も変わらない」らしい。

ニーナと何度か仕事を行ったが、とにかく強烈だった。私のプランが正しいことは誰の目にも明らかなのに、彼女は自分の考えを曲げない。同僚にバックアップを求めると、皆、だんまりである。

ニーナの部下たちは、彼女をボスと認め、恐れていた。この時、私が理性を失っていれば彼女の思うつぼだっただろう。

私は自分の立場を理解していた。ニーナの方が格上であることは明らかである。しかし、間違いは間違い、と最後まで意思を貫かせてもらった。数時間におよぶ打ち合わせの末、彼女は折れた。

翌日、私はニーナの事務所を訪ね、詫びた。すると、「あなたが正しい。誤る必要などない」とどこ吹く風である。部下の前でメンツをつぶしたことが気がかりだったものの、それすら、「メンツもクソもない。最善の道を進むためであれば、ボスのメンツなどいらない」と切り捨てられた。

数日後、ニーナの主催するパーティに出席した。

ニーナの美しい容姿に惹かれる男たちがハエのようにブンブンたかり、彼女の周囲数メートルは異様な混雑具合だった。

パワーレズビアンは男と対等の関係を望む。また、男は100%恋愛の対象にならないため、無用な気遣いも好まない。

男が先に歩きエスコートしようとすると、「私は普通の女性とは違う。自立したビジネスパーソンは、自分でイスを引き、座る。ドアも自分で開けるし、もちろんひとりで歩けるから安心しなさい」と言わんばかりの冷たい視線で相手を睨みつけるのである。

私はニーナに聞きたいことが山ほどあったので、相手の顔色など窺わず、好き勝手に質問した。「パートナーとの関係」「セックスの仕方」「どこでレズビアンと知り合うのか」「男とセックスしたことはないのか」など、彼女の部下が聞いたら卒倒しそうな質問ばかりすると、一切躊躇することなく答えてくれた。

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味方につけると心強い?

パワーレズビアンは気を遣われたくないと思っている。女性しか愛せないことを一切隠さず公にし、自分の個性として受け入れ、他人にも認めてほしいのだ。

私がプライベートなことばかり質問すると、「ビジネス関係にある男性からパートナーとの出会いやセックスの質問をされるとは夢にも思わなかった」と答えつつも、イヤな顔は一切せず、期待以上の答えを返してくれた。

しかし、全てのパワーレズビアンがパートナーやセックスの話題を話してくれるとは限らない。

メンタルヘルスアドバイザーとして働くジェニファー(仮名)は、画廊などで数十万~百万ドル以上する絵を買いあさる美術系パワーレズビアンである。

ニーナのパーティでジェニファーを紹介されたのが7年前、今ではかけがえのない友人のひとりになった。

彼女はセックスの話をあまり好まない。しかし、誰とでもざっくばらんに話し合える関係を構築したいと考えているようだ。

ジェニファーは男から酷いセクハラを受け、ボロボロに叩きのめされたことがある。

それは彼女のトラウマになり、今の自分を作り上げる原動力になったが、結果、セックスの話は嫌いになってしまったという。

パワーレズビアンは強烈な個性の持ち主ばかりである。

アメリカで暮らす人々は自己主張が強いもしくは強くなる、と言われている。しかし、喋るのが苦手な方や自分の意見を言わない方も多い。

私の知るパワーレズビアンたちは、自己顕示欲、エゴの塊である。彼女たちのモットーは「攻めあるのみ」「押して押して押しまくる」「男はクソったれ」など、強烈なものばかりだった。

彼女たちを敵に回してはならない。相手を完膚なきまでに叩きのめすだけでなく、「社会的に抹消してやる」と言わんばかりに勢いでとどめを刺しにくるため、よほどの理由がない限り、戦うべきではないだろう。

一方、味方につけると最高に頼もしい。ビジネスの関係であれば、助けになることは間違いない。また、異性を一切意識せずに会話を楽しめる稀有な存在にもなってくれるはずだ。

ただし、味方につけたいもしくは仲良くしたいのであれば、相手の雰囲気やモットーなどに注意を払い、慎重にことを進めなければならない。対応を少しでも誤ると、彼女たちは牙を剥き、喉元に食いついてくる。

パワーレズビアンこそニューヨーク州マンハッタンの最先端を行く女性たちだと、私は思う。

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