アメリカ国内のコロナウイルス感染者は216,000人を突破、5,000人以上が死亡した

 ジョン・ホプキンス大学の調査によると、アメリカ国内の感染者数は216,000人を突破、1日までに5,100人以上が死亡した。また、最近の犠牲者の中には、生後6週間ほどの乳幼児も含まれている。

 ワシントンポストは、連邦政府の備蓄する医療関係器具(保護具やマスク、医薬品など)がほぼ無くなったと伝えた。連邦政府は各州から医療従事者、施設、器具等の拡充を求められているが、それに全て応えることはできていない。

アメリカ政府が間違えたこと、成功したことは以下の通り。

間違い

医療関係器具の不足

 マスク、手袋、ガウン、人工呼吸器、あらゆる医療関係器具が不足している。感染拡大の著しいエリアでは、医療従事者を守る装備が圧倒的に不足。結果、医療従事者たちは使用済みの防護服などを流用せざるを得なくなり、また、手作りの器具等を利用する者も多いという。

 人工呼吸器が不足することは以前から伝えられていた。残念ながら、政府およびトランプ大統領の対応は遅かったと言わざるを得ない。また、民間企業等の協力により人口呼吸器の増産が開始されたものの、州政府との奪い合いになっている地域もあるという。

 命を助けるべく戦っている医療従事者たちは、医療関係器具が不足することで、コロナウイルスの脅威にさらされている。罹患する者も多く、最後の砦が失われれば、致命的な事態を招きかねない。

 ジョージ・ワシントン大学のジェフリー・レヴィ教授は、「パンデミックを想定し、医療関係器具を備蓄しておくべきだった。想定を上回る勢いでウイルスが蔓延し、対応が後手後手に回っている。民間企業などの協力により生産能力は増強されたが、対応が遅すぎた」と語った。

検査体制の遅れ

 検査キットの準備、検査体制の確立の遅れに対しても、厳しい指摘が相次いでいる。検査体制が確立されなければ、国民は罹患の有無をチェックできない。結果、感染した多くの国民が普段通りに生活し、感染拡大を招いた。

 連邦政府は、3月中旬までに少なくとも500万件の検査を実施すると約束。しかし、3月末時点で実施された検査は約100万件にとどまった。他の国に比べると検査体制は確立されつつあるが、それでも足りない、と関係者はいう。アメリカの人口は約3億2900万人、数が不足していることはあきらかである。

 また、検査を行うラボも厳しい状況下にある。恐ろしい数の検査キットが持ち込まれ、職員たちは昼夜を通して働き詰めの状態だ。現在、検査に約1週間以上の遅延が発生、ラボの体勢が見直されない限り、改善の見込みはないという。

政治的争い

 31日午後の記者会見、トランプ大統領はコロナウイルスとの戦いにより多くの死者が出るだろうと発表した。このコメントは、先週発表されたものと全く異なる。「4月中旬のイースター休暇までに事業を再開できるだろう」と楽観的なコメントを発表していたが、その願いは雲散霧消した。

 1月に中国でコロナウイルスが蔓延し、イタリアに被害が及んでも、トランプ大統領は「アメリカは大丈夫だ」と脅威を軽視した。国内で数件の感染者が発見された直後においても、「夏までには全てが元通りになっている」と述べた。

 根拠のない/一貫性のないメッセージを発信し続けた結果が事態を悪化させた、という科学的根拠はない。しかし、ありとあらゆる対応が後手に回った要因は、間違いなくトランプ大統領にある。

 ニューヨーク州で感染が拡大した際、トランプ大統領はクオモ知事を名指しで批判。同じくミシガン州のホイットマー知事もツイッターで批判した。この言動を受け、多くの州知事が「連邦政府は(最前線で)戦っている人たちに感謝しなければならない」とコメントを発表した。

伝わらない警告/社会的距離の失敗

 トランプ大統領の緊張感のなさが、そのまま国民の行動に反映された。春休みに入ると、ビーチは若者たちで溢れかえり、教会には人が集まった。ある宗教関係者は、「宗教の自由、権利は万人に与えられたもの。私たちは何があろうと教会に集まり、祈りを捧げる」とコメントした。

 フロリダのビーチでパーティを行っていた3人の若者は、「かかった時はその時、コロナになるだけさ」とCBSの記者に語った。その時点で強制力のある措置が発表されていなかったため、彼らを止めることは誰にもできなかった。

 最善を尽くした対策がコロナウイルスの拡大を助長する可能性もある。公共交通機関の運行本数を減らした結果、利用者の多くが運行されている電車・バスに集中、社会的距離を保つことは難しいだろう。また、大学の閉鎖に伴い、学生たちが地元に帰郷、そこでウイルスを拡散させた、という指摘もある。

 トランプ大統領が「大丈夫だ」と発言した結果、ビーチ、バー、飲食店、娯楽施設に人が集まり、ウイルスの拡大につながった。

成功

景気刺激策

 先週、米国議会は過去最大となる2兆ドル(約220兆円)の景気刺激策/法案を承認した。多くのアメリカ人に現金が支払われ、失業支援の拡大、医療施設および公共サービスへの援助、大打撃を受けている航空産業、中小企業等への支援が行われる予定だ。

 この法案に対しスティーブン・ムニューシン財務長官は「景気刺激法案ではなく、存続法案として記録すべきである」と述べた。

 コロナウイルスに関連する対策・措置が発令されたことにより、300万人を超える国民がレイオフされ、職を失った。労働者への補償は喫緊の課題であり、可能な限りの対応を執ると連邦政府も発表している。また、トランプ大統領とナンシー・ペロシ民主党下院議長は、インフラ投資、医療給付等を伴う追加の援助法案についても話し合いを始めているとのこと。

治療薬開発

 製薬会社および医療研究者たちは、パンデミックに立ち向かうべく、コロナウイルスワクチンの研究開発を進めている。ある企業は、ウイルスの保菌者をほぼ即座に特定できる新しい検査を開発した。これにより、公衆衛生担当者たちは、新しいホットスポットを素早く特定、検疫の可否を即断できる。

 ワクチンの研究開発にあたる製薬会社や医療研究社たちは、連邦政府から十分な投資/補償を受けているという。ただし、ワクチンを開発できたとしても、効果を確認するには数カ月以上かかる。また、ワクチンの供給が開始されるまでには少なくとも1年近くかかると予測した。

州知事たち

 難しい決断を迫られる州知事たち。しかし、彼らは連邦政府に頼ることなく、自ら決断を下している。ただし、良い決断もあれば、失敗と思われるものもある

 カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事、ワシントン州のジェイ・インスリー知事などは、ウイルスの感染拡大が始まった時点で学校を閉鎖。閉鎖した学校に避難所を設けるよう指示し、住民へのウイルス拡散を防いだと言われている。

 また、オハイオ州のマイク・デワイン知事は、感染の兆候が見られた初期段階で予防/防止策を発令。初動の速さがコロナウイルスの蔓延を防ぎ、賞賛を受けている。

 多くの州がニューヨークの悲劇を避けるべく行動を開始している。しかし、コロナウイルスは猛烈な勢いで蔓延しつつあり、事態は日を追うごとに悪化している。

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