国家非常事態宣言から半年・・・

3月13日、ドナルド・トランプ大統領はホワイトハウス・ローズガーデンの演台に立ち、コロナウイルスに対する理解を国民に求めたうえで、脅威は目の前に迫りつつあると述べ、「国家非常事態」を宣言した。

6か月後、200,000人のアメリカ国民がコロナウイルスで死亡した

その間、世界中の科学者やエキスパートたちの活躍により、コロナウイルスとそれが引き起こす病気や合併症の科学的理解は確実に前進した。

しかし、「ウイルスが引き起こす多種多様な問題」「患者をどのように治療すればよいか?」「ワクチンは作れるのか?」など、分からないことも山積している。

数十のワクチン候補が各国で開発段階にある。しかし、数千億ドル規模の予算が投じられているのにも関わらず、安全で効果的なワクチンが来年までに配布される可能性は極めて低いと専門家は言う。

2020年3月13日/国家非常事態を宣言するトランプ大統領

コロナウイルスを封じ込めるワクチンや治療法は開発・調査段階にあり、その進行を抑えるために、社会的距離のルールやマスク着用などの公衆衛生対策が確立された。

社会的距離やマスク着用のルールは多くの命を救うと同時に、アメリカ国民の愛国心をテストした。

ロックダウンによる孤立、失業、絶望はアメリカだけでなく、世界中に打撃を与えた。ある調査によると、貧困層やパンデミックの最中に何らかのトラウマを経験した人は、高い確率でメンタルに支障をきたしているという。

最前線で戦う労働者と有色人種を殺したパンデミックは、この6カ月間で政治的な戦いに変貌した。マスクは衣料製品から政治的提携の象徴に進化した。

しかし、驚くべきことに、これほど深刻な要素が山積しているにも関わらず、公衆衛生の専門家はアメリカの状況を絶望的とは見ていない

彼らは「前進する方法が必ずある」と主張する。そして、その中にはアメリカ国民を窮地に追いやった連邦政府や関係当局との”別れ”も含まれている

コロナウイルスは主に呼吸器系を攻撃するウイルスと考えられていた。しかし、科学的調査が進み、それは心臓、脳、血管系、神経系を含む身体のほぼすべての臓器に何らかの影響を与える可能性があることが分かった。

また、子供は重症化しにくいものの、学校での集団感染により、彼らがウイルスへの免疫を持っているという予想はあっさり覆された。

さらに、ウイルスへの感染リスクは人種や性別、労働環境に左右されるという考えも、最前線で働くありとあらゆる人々が感染、死亡したことで払拭された。

医師たちは、ウイルスから回復した後、数か月後に体調を崩す患者などに出会い、対処の難しさを痛感している。

ニューヨーク市のマウントサイナイ医療システムでは、コロナウイルス患者の事後ケアセンターを開設し、体調が通常の状態に戻るまでのサポートを行っている。

リサーチセンターオブアメリカでのCOVID-19ワクチン開発研究の様子

全国の都市が何カ月にも渡ってロックダウンなどの予防対策措置を講じ、その間、屋外で様々な抗議活動が発生した結果、多くの専門家たちが「屋外での感染リスクの低さ」に同意している。

ただし、屋外でもクラスター発生のリスクがあることを理解しなければならない。

サウスダコタ州で開催されたオートバイ集会(参加者300,000人超)およびメイン州での屋外結婚式(出席者62人)で発生したクラスターは、州当局を大いに慌てさせた。なお、両集会の参加者たちの距離は非常に近く、マスクを着用していない人が多数混ざっていた

その間、世界はウイルスの蔓延を食い止めるワクチン開発に全力を注いできた。なお、アメリカはワクチンを均等に配分するグローバルプログラムへの参加を拒否。単独で前進する道を選択した。

連邦政府は配布可能なワクチンが誕生次第、州および地方の保健当局に手引きを配布する予定だという。ただし、臨床試験フェイズ3を終えたワクチンはまだなく、いつ承認されるかも不明である。

トランプ大統領はこの秋までにワクチンを準備できると示唆した。しかし、科学者や専門家たちはその意見に懐疑的である。

疾病予防管理センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長は、ワクチン承認から国民への接種開始まで、少なくとも「6カ月~9カ月」はかかると語っている。

トランプ大統領、コロナウイルスの死者が20万人を突破したことを「恥」と呼ぶ

自然災害、テロ、内乱などのトラウマ的出来事がメンタルに不調をきたすことは、科学的に証明されている。

トラウマを研究する研究者たちは、「コロナウイルスがアメリカ国民のメンタルに広く不調をきたしている」と指摘する。

学術雑誌、JAMA Network Openが発表した研究データによると、うつ病の症状を報告しているアメリカ国民の数は、パンデミック後、3倍以上になったという。

パンデミック前の調査結果では、抑うつ症状患者は約9%だった。しかし、それが28%まで増加、コロナウイルスやロックダウンは、アメリカ国民の心に深い傷をつけたのである。

また、富裕層より貧困層が影響を受けやすいこともおおむね証明されている。

抑うつ症状と報告された28%のおおまかな内訳は以下の通り。
・世帯収入20,000ドル未満の人の47%が抑うつ状態だった
・貯蓄5,000ドル未満の人の41%が抑うつ状態だった

なお、国内の感染状況は州によって時間とタイミングが大きく異なったため、うつ病の地域差を調査することはできなかったという。

アメリカ人の自殺率はパンデミック前の時点で上昇傾向にあった。専門家は、パンデミックが自殺率をさらに引き上げると警告している。

連邦捜査局(FBI)の調査によると、自殺に使われやすい銃器の販売数は、パンデミックが深刻化した3月から5月に大きく増加。通常より200万丁以上多く販売されたという。

専門家たちは、トランプ政権が犯した過ちをリスト化していると述べ、来たるべき時に国家再建が図られると主張している。

現在、多くの州政府と地方政府はコロナウイルスへの対応に行き詰まり、規制の発出が遅れ、感染状況が悪化しているにも関わらずロックダウンを解除し、経済活動再開への道を突き進んでいる。

トランプ大統領とホワイトハウスは、停滞している国の経済活動を元に戻すべきと主張。何千万もの失業者を出したロックダウンによる経済損失は、他のあらゆる考慮事項をはるかに上回ったと述べている。

また中国との往来を早期に制限したと自画自賛し、感染者数と死者数の爆発的増加は全て中国共産党の責任と強く非難した。

各州知事はその意見に反対したが、トランプ大統領は州に提供した増援物資を引き合いに出し、反対意見を却下した。

2020年3月9日/コロナウイルスの感染状況を説明するトランプ大統領

CDCのレッドフィールド所長は、ウイルス発生初期段階での対応の遅さを批判され、「間違いがあった」ことを認めた。

ロバート・レッドフィールド所長:
「我々は大きな間違いを犯した。今は最善を尽くす以外手はないと考えている」

「我々は何があろうと自分たちのやるべきことを遵守しなければならない。ワクチン開発やその承認についても同様である

CDCがマスクの重要性を主張する中、トランプ大統領はその発言、そして有効性を疑問視し、時々思い立ったようにエンブレム付きのマスクを着用、有権者にアピールした

連邦政府はいまだに全国規模のマスク着用令を発出していない。

9月22日、ABCのインタビューを受けたトランプ大統領は、「パンデミック対応については、今後も現在の体制を維持する」と述べ、「我々は素晴らしい仕事をしている」と自画自賛した。

専門家たちは、「アメリカの”流れ”を逆転する方法はある」と強く主張する。

専門家たち/アメリカ国民が前進するための道:
・外出する時は必ずマスクを着用する
・社会的距離のルールを遵守する
・手洗いを徹底する
・大規模な集会を停止する
パンデミック以降に設けられたあらゆるルールを遵守する

ジョンズ・ホプキンズ保健安全センターの上級研究員を務めるアメシュ・アダルヤ博士は、CDCへの政治的影響については、以下のように述べた。

アメシュ・アダルヤ博士:
「我々はCDCのプロセスと報告を”聖域”と見なしている。政治的介入、大統領選挙に向けた圧力などもってのほかである

「世界がCDCの調査報告に注目している。コロナウイルスの感染予防対策に関するガイダンスはもちろん、現在進められているワクチン開発でも、CDCは完全なる権限と独立性を守らねばならない

「CDCは世界最高のブランドだった。しかし、今、その価値は大きく下落している」

【関連トピック】
アメリカの死者数が200,000人を超える
COVID-19ワクチンをめぐる争い

2020年3月24日/ニューヨーク州パターソンの救急医療従事者たち

アフィリエイト広告
スポンサーリンク