好景気は去った

アイオワ大学を卒業したアレクシス・ゴア氏は、卒業証書を受け取る日が何より楽しみだった。卒業後の進路も決まり、輝かしい未来を目指しキャリアを磨くと確信していたのである。

3月、アメリカ国内のコロナウイルス感染状況が壊滅的な勢いで悪化し、ゴア氏の計画は雲散霧消した。

バーチャル卒業」は理想的ではなかった。しかし、デイリー・アイオワンのテレビニュースキャスターのスポーツレポーターとして2年働いた(インターン期間含む)ゴア氏は、大学卒業のステップアップを目指していた。

アレクシス・ゴア氏:
「3月、テレビニュースキャスターの仕事に応募したが、この分野の求人はないと言われた」

現在、ゴア氏はリモート・デジタルメディア・インターンシップに応募し、求人市場に参加したいと願っている。

非営利専門家協会NACEの調査によると、パンデミック発生以降、雇用者の22%がインターンシップへのオファーを取り消していることが分かったという。

また、NACEのフォローアップ調査では、求人を受け取った最近の卒業生が、コロナショック後、どのように就職を遅らせたかが詳しく記されている。

さらに、就職と採用状況の報告書によると、2020年の卒業生の多くが危機的な状況に直面しているという。コロナショック後、「新卒」「その他」の求人情報は68%減少し、売り手市場は「買い手市場」に様変わりした。そして、残された希少な求人も消えつつある。

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テンプル大学経済学部准教授と、経済学研究科のディレクターを務めるダグ・ウェバー氏は、コロナウイルスの影響で傷ついた労働市場に参入すると、長期的にはマイナスの影響を受ける可能性が高いと指摘した。

ダグ・ウェバー氏:
「不況、特に悪い状況下で卒業することは、ゲームでいうとより低いランクから戦い始めるようなものである」

「コロナウイルスの存在しない素晴らしい世界で就職したあなたと、今のアメリカ、コロナショック時代に就職したあなたの未来は、恐らく全く異なる。昇進するスピードはもちろん、キャリアアップを目指す転職もこれまでのようにはいかない」

ピュー研究所の調査によると、アメリカ国内の社会人の約3分の1がパンデミック後に職を失ったか就労時間を削減されたという。

2020年の卒業生は複雑かつ困難な就職市場に参戦せざるを得なくなった。

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仕事を見つける

求人市場に参加したゴア氏は以下のように述べた。

アレクシス・ゴア氏:
私たちは自分の未来のために働く。誰もがそうしたいと願っている」

「私は今、仕事を探している。コロナウイルスは完全に想定外だったが、やらねばならない。将来はスポーツ関連分野でキャリアを磨きたいと思っていた。しかし、現実は甘くない。とにかくやるしかない」

ブリジット・バンサー氏は、インディアナ大学で環境の持続可能性の修士号を取得し、卒業した。

パンサー氏はインターン終了後に本採用されることを期待して、経営管理コンサルタント会社Fine Tuneで1年間働いた。

ブリジット・バンサー氏:
「コロナウイルスのおかげで、Fine Tuneに私を雇う余裕はなくなった

「今、私は自分の専門分野の内外で積極的に仕事を探している。就職できるならどこにでも移動する

「特定の都市に固執するのではなく、視野を広げることにした。自分にとって最も条件の良い場所を選びたいが、現実を見てどこにでも行く覚悟を決めた」

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Wakefield ResearchとMonster.comが行った共同調査によると、今年のアメリカの卒業生の55%が自分の専門分野に属さない、または経験のない分野の仕事に応募し、この中の52%は、専門分野より就労条件の悪い仕事でも納得せざるを得なかったという。

ニューヨークの私立大学、イサカ・カレッジを卒業したマリサ・エリス氏は、「仕事を見つけなければならない。私は卒業と同時に就職できると思っていたが、パンデミックが発生し、その計画は頓挫した」と述べた。

エリス氏は大学在学中、ニュースやソーシャルメディア関連のインターンとして経験を積んだ。ラスベガスのペレド・エンターテイメント・グループとテレビ局KSNVで働いた後、そこからのオファーに期待していたという。

その後、彼女は3月から求人をチェックし始め、1日に数時間を費やし、自分の目指す仕事を探している。

7月、米労働省は、パンデミック発生から3か月で失業者数はほぼ3倍になり、失業率は10.2%に達したと発表した。しかし、エリス氏はそれでも自分の目指すべき仕事を探したいと主張する。

マリサ・エリス氏:
この時期に前向きな姿勢でいることはとても大切だと思う。私は自分自身に希望を抱き、厳しい現実に直面している人は自分だけでないと言い聞かせ、戦うことを決めた」

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仕事の価値

クリエイティブリクルーター兼キャリアアドバイザーとして活動するクリスティーナ・カプッチーリ氏は以下のように述べた。

クリスティーナ・カプッチーリ氏:
「企業は今、経験豊富(優秀)な従業員を探しているかもしれない。しかし、今年大学を卒業した者も、この市場でチャンスをつかめると思っている」

「卒業生は、経験を積んだ人より低賃金で雇える。そして、彼らはこの厳しい時代を生き抜くために努力を惜しまない。若い力は企業の成長を後押しする。何より、彼らはとても柔軟だ」

「パートタイム、フリーランス契約に応募するのであれば、その可能性はさらに広がる」

仕事を得るために行動し続け、世界最大級のビジネス特化型SNS、LinkedInなどを利用し、希望する業界の人々と連絡を取ることも重要である。

カプッチーリ氏は、「毎週一貫して就職市場やLinkedInなどの中に身を置くことが非常に重要」と語った。

自分が狙っている業界の元社員、元インターンシップマネジャー、博士、関係者などから情報を集めれば、就職だけでなく、より大きなチャンスを得られるかもしれない。

6月、デボール大学でマーケティングの学士号を取得、卒業したオデット・イダルゴ氏は、「コロナ禍であろうと、学位を取得する価値はあると思う」と語った。

ペプシコ、ミネソタ大学、Datassentialなどの企業でインターンシップとして働いたイダルゴ氏は現在失業中であり、デポールのケルシュタットビジネス大学院でビジネス分析の修士号を取得すべく、学校に戻ると決めた

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ハワード大学経済学部のアンドリア・スマイス氏は、大学の学位について、コロナショックを考慮し一部の取得条件を緩和するかもしれないと述べた。

アンドリア・スマイス氏:
大学の学位を持つ卒業生は、高校の学位を持つ者より失業する可能性が低い。これは過去の不況時に行われた調査で明らかになっている」

「コロナウイルスの終息がいつになるかは誰にも分からないし、正直期待しない方がよい。今大切はことは、若者がより高いレベルの教育を受け、力をつけることである」

「2020年2月~5月の間、学士号以上を取得している者の失業率は5.5%だった。一方、高校の学位を持つ者は17%を超えた。今後、企業は採用候補者の学位をより厳しくチェックするようになるだろう」

テンプル大学経済学のダグ・ウェバー准教授は、「この不況は、ホワイトカラーよりブルーカラーやサービス業界により大きな影響を与えた。大学の学位を取得することは1年前より数段重要になった」と語った。

仕事を探している時、「何かを持って」いれば、「何もない」より良い結果を残せる可能性が高い。

2020年、アメリカだけでなく、世界の就職市場が一気に厳しくなった。少なくとも今後数年は、学位や資格が就職(失業率)に大きな影響を与えるものと思われる。

ただし、就職市場はいずれ回復する。雇用を削減もしくは新規雇用を抑えていた企業は、新たな従業員を必要とする。大切なことは、今、自分ができる最善を尽くし、来たるべき時に備えて地道にコツコツと努力を続けることだ。

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