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米ユタ州南東部で竜巻発生、複数の民家が全壊、ケガ人の情報なし

負傷者は報告されていないが、家畜やペットが行方不明になっているという情報が地元警察に入っているとのこと。
2025年9月13日/米ユタ州サンフアン郡で発生した竜巻(AP通信)

ユタ州南東部で週末に竜巻が発生し、複数の住宅が全壊した。地元当局が14日、明らかにした。ケガ人の報告はない。

国立気象局(NWS)によると、米ユタ州サンフアン郡で13日の現地時間12時35分頃から1時間にわたり、少なくとも2つの竜巻が発生したという。

AP通信は当局者の話しとして、「1つの目の竜巻は16キロほど進み、消滅したとみられるが、現時点で正確な経路や風速は特定できていない」と報じた。

NWSは15日に現地調査を行うとしている。

地元当局はX(旧ツイッター)への投稿で、少なくとも3棟の民家が全壊したと報告している。

負傷者は報告されていないが、家畜やペットが行方不明になっているという情報が地元警察に入っているとのこと。

ソーシャルメディアで共有された動画には竜巻とみられる黒い柱が住宅に接近する様子が映っていた。

米国でこのような竜巻が発生することは珍しくなく、その規模や被害の大きさから国内外で大きな注目を集めている。竜巻とは積乱雲の下で強い上昇気流と下降気流が交錯し、強烈な渦が発生することで生じる現象で、時速数百キロに達する暴風を伴う。特に米国中部から南部にかけての地域は「トルネード・アレー」と呼ばれ、竜巻の発生件数が世界でも突出している。

その理由の一つは地形的条件にある。北アメリカ大陸は東西を高い山脈で囲まれ、中央部が広大な平原となっているため、カナダからの冷たい乾いた空気とメキシコ湾からの暖かく湿った空気がぶつかりやすい。これにより大気が不安定化し、強力なスーパーセルと呼ばれる積乱雲が形成される。このスーパーセルが竜巻の母体となることが多い。

米国では毎年およそ1000件以上の竜巻が観測され、被害規模も甚大である。竜巻の強さは「改良藤田スケール(EFスケール)」で評価され、EF0からEF5までに分類される。特にEF4やEF5といった最大級の竜巻は建物を完全に破壊し、自動車や列車を吹き飛ばすほどの威力を持つ。2011年のミズーリ州ジョプリンで発生した竜巻はEF5に分類され、160人以上の死者を出した。

竜巻の被害は建造物やインフラへの直接的な破壊だけでなく、経済や社会にも深刻な影響を与える。例えば農業地帯での発生は穀物や家畜に大きな損害を与え、都市部での発生は住宅や病院、学校などの社会基盤を一瞬で崩壊させる。また竜巻は短時間で発生・消滅することが多いため、予測が難しい点も防災上の大きな課題となっている。

米国ではNWSやストーム予測センター(SPC)が気象レーダーや人工衛星を駆使して竜巻の発生を監視している。竜巻警報のシステムは比較的発達しているが、それでも住民が避難できる時間は平均で十数分にすぎない。このため各地ではシェルターの整備や避難訓練が重視されている。さらに、住宅の建築基準を強化する取り組みも進められているが、コストや地域差によって十分に実施されていない面もある。

竜巻は自然現象の中でも予測が難しく、突発的で破壊力が極めて高い。そのため米国社会においては、科学技術の進展と地域社会の備えを両立させることが不可欠である。気候変動によって今後の竜巻の発生パターンが変化する可能性も指摘されており、米国における竜巻対策は引き続き重要な課題であり続ける。

<竜巻の勢力>
▽EF0:風速 17~32(m/s)
▽EF1:風速 33~49(m/s)
▽EF2:風速 50~69(m/s)
▽EF3:風速 70~92(m/s)
▽EF4:風速 93~116(m/s)
▽EF5:風速 117~142(m/s)

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