地球温暖化による海面上昇、想定より深刻な影響=学術誌ネイチャー
今回の研究成果は、海面上昇の影響を評価する際の基準設定がいかに重要かを浮き彫りにしており、より精緻なデータと評価手法の見直しが沿岸部の気候適応策や都市計画にとって不可欠であることを示している。
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地球温暖化による海面上昇が、従来の想定よりも深刻な影響を及ぼす可能性があるという研究結果が、学術誌ネイチャー(Nature)に発表された。この研究では過去数十年にわたる沿岸の海面高さを対象とした数百件の科学論文やリスク評価を分析したところ、約90%が陸と海の標高差の基準点(ベースライン)の設定を誤り、本来の海水位を平均して約30センチメートル低く見積もっていたことが判明した。
この誤差の主因は、海面と陸地の高さを測る際の方法の違いにある。海水位は潮位や波、潮流、気象条件など動的な要素を含めた実測値に基づくべきところ、従来の多くの研究では「海抜0メートル」を基準とした単純なモデルを使っていた。これに対し、陸地の標高は衛星データに基づく地球重力面モデル(ジオイド)など別の基準で測られるため、両者のズレが沿岸線での評価に大きく影響していたとされる。中でも太平洋、東南アジア、グローバルサウス(南半球を中心とした途上地域)でのズレが顕著で、欧州や大西洋沿岸地域よりも問題が深刻だった。
研究チームによると、もし今世紀末までに海面が約1メートル上昇すると予測される現在の気候モデルが実現した場合、正確なベースラインで計算すると、浸水リスクのある陸地面積は従来推定より最大37%増え、影響を受ける可能性のある人々は7700万~1億3200万人にのぼるという。これは、沿岸部で暮らす人々の居住地、インフラ、農地に甚大な影響を及ぼす可能性を示している。
研究に関わったオランダのフィリップ・ミンダーホード(Philip Minderhoud)教授は、衛星データや地上モデルがそれぞれの領域では正確でも、海と陸が交わる地点では多数の要因が考慮されていないと説明する。また、イタリアのカタリーナ・セーガー(Katharina Seeger)氏は、多くの評価が実際の海面を参照せずに0メートルを基準に使っているため、本来の海水位が反映されていないと指摘した。
この誤差が特に大きい地域として東南アジアが挙げられており、この地域は世界でも海面上昇のリスクが高い人口密集地でもあるとの見方が専門家の間で示されている。また、研究には直接関与していないポツダム気候影響研究所のアンデルス・レヴァーマン(Anders Levermann)氏も、こうした見直しが沿岸部住民のリスク評価に重要だと述べた。
一方、研究の結論については、すべての専門家が一致しているわけではない。フランス地質調査会社の研究者は、この問題はすでに多くの現場で理解され対策が進んでいるとの意見を示し、別の専門家は地域ごとの詳細なデータを活用することで既存のリスク評価が十分に機能しているケースもあると述べている。
今回の研究成果は、海面上昇の影響を評価する際の基準設定がいかに重要かを浮き彫りにしており、より精緻なデータと評価手法の見直しが沿岸部の気候適応策や都市計画にとって不可欠であることを示している。
