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スリナム、熱帯雨林の90%保護へ、世界目標を大幅に上回る

スリナムは南アメリカ大陸の北東部に位置する小さな国であり、その国土の約90%が熱帯雨林に覆われている。
南米スリナムの熱帯雨林(Getty Images/AFP通信)

スリナム政府が27日、国内の熱帯林の90%を恒久的に保護すると約束した。

シモンズ(Jennifer Simons)大統領は声明で「森林が日々失われ続ける世界で、1500万ヘクタールを超える熱帯雨林を管理する重大な責任を理解し、受け入れている」と述べた。

この公約は国連が支援する「30x30」目標(2030年までに陸地と海洋の30%を保護する)を大幅に上回る。アマゾン熱帯雨林の中心地であるブラジル・ベレンでは11月にCOP30(国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議)が行われる予定だ。

スリナムは南アメリカ大陸の北東部に位置する小さな国であり、その国土の約90%が熱帯雨林に覆われている。これは世界でも有数の森林率の高さを誇り、面積に対する森林の割合では世界トップクラスである。この広大な熱帯雨林はアマゾン熱帯雨林の一部であり、地球規模で見ても極めて重要な生態系を形成している。

スリナムの熱帯雨林は、多様な動植物が共存する生物多様性の宝庫である。ここにはジャガー、ナマケモノ、アルマジロ、様々な種類の猿や鳥類、爬虫類、両生類などが生息している。また、植物種も豊富で、薬用植物や希少種を含む多くの固有植物が見られる。森林はおおむね手つかずの状態で残されており、人間の影響を比較的受けていないことから、科学者や環境保護団体から注目されている。

この森林の多くは、先住民やマルーン(アフリカ系逃亡奴隷の子孫)によって伝統的に管理されてきた。彼らは狩猟、採集、焼畑農業などを通じて自然と共存しており、森林破壊を最小限に抑える持続可能な生活様式を続けている。こうした伝統知識は、生態系の保全において重要な役割を果たしている。

しかし近年、スリナムの熱帯雨林は金採掘や木材伐採、農地開発などの影響により、徐々に脅かされつつある。特に違法な金採掘は水質汚染や森林破壊を引き起こしており、環境保護の面から深刻な問題となっている。また、金採掘には水銀が使用されることが多く、これが河川を通じて生態系全体に悪影響を及ぼしている。

政府はこうした問題に対処するため、自然保護区の設置や持続可能な森林管理政策を進めている。たとえば「セントラル・スリナム自然保護区」は、国土の約10%を占める広大な保護区域であり、ユネスコの世界自然遺産にも登録されている。この保護区は科学研究やエコツーリズムの場としても活用されており、環境と経済の両立を図る取り組みが行われている。

スリナムの熱帯雨林は気候変動の抑制においても重要な役割を担っている。森林は二酸化炭素を吸収することで地球温暖化の進行を緩和し、生物多様性の保全や水資源の循環にも貢献している。今後もこの貴重な森林資源をいかに守り、次世代に引き継いでいくかが、国際社会にとっても大きな課題となっている。

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