超大型の台風18号、中国南部と香港に接近中、上陸へ
18号は24日未明の時点で南シナ海北部を22キロの速さで西北西に進んでいる。
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中国当局が超大型の台風18号(ラガサ)の接近に先立ち、学校を閉鎖し、市民に最大級の警戒を呼びかけている。
18号は24日未明の時点で南シナ海北部を22キロの速さで西北西に進んでいる。中心気圧は925hPa、中心付近の最大風速は55メートル。中国南部の広東省沿岸に接近する見込みだ。
中国中央テレビ(CCTV)によると、広東省では100万人以上が避難したという。
当局は学校に閉鎖を命じ、企業に在宅勤務に切り替えるよう促した。南部の空港やフェリーも欠航を決めている。
フィリピンでは少なくとも3人が死亡、30人が行方不明になり、数千人が影響を受けた。
香港当局も市民に警戒を呼びかけ、接近前に買い物を済ませるなど、不要不急の外出を控えるよう呼びかけている。
中国の気象台は18号が24日の正午から夕方にかけて広東省の岸地域に上陸すると予測した。広東省の大部分と近隣の福建省ではすでに大雨が降っている。
香港当局は4~5メートルの高潮が予想されるとして、市民に対し、海岸付近に近づかないよう警告した。
中国と香港は地理的に南シナ海に面しているため、毎年夏から秋にかけて台風の影響を強く受ける。台風は暴風雨や高潮、洪水、土砂災害を引き起こし、大規模な人的被害や経済的損失をもたらしてきた。特に中国南部沿岸部や香港は、人口密度が高く経済活動も集中しているため、過去の台風で甚大が被害を受けてきた。
香港においては、1912年に上陸した「1912年香港台風」が特筆される。この台風では700人以上が死亡し、特に港湾での船舶転覆が被害を拡大させた。当時の香港はまだインフラ整備が不十分であり、強風と高潮への備えが欠如していたため、港湾都市としての脆弱性が露呈した。また1937年には「1937年香港台風」が襲来し、約1万1000人もの死者を出したとされる。これは香港史上最悪の自然災害の一つであり、台風による高潮が低地を襲い、多数の住民が流されて命を落とした。この災害を契機に、香港当局は防災体制の強化を進め、避難警報や防潮堤の整備を進めた。
戦後以降も香港は度々強力な台風に見舞われている。1962年の「台風ワンダ」は特に有名で、最大瞬間風速が70メートルに達し、市街地に甚大な被害を与えた。この台風で香港全域が停電し、建物の倒壊や船舶の損失が相次ぎ、130人以上が死亡した。ワンダは近代化が進んでいた香港においても台風の猛威が依然として深刻な脅威であることを示した。さらに2018年には「台風マンクット」が襲来し、香港天文台が最も高い警戒レベルであるシグナル10を発令した。マンクットでは数百人の負傷者が出たが、事前の警戒や建物の耐風設計の向上により、人的被害は比較的抑制された。この事例は、長年の経験と対策の蓄積が被害軽減に寄与していることを示している。
一方、中国本土においても台風は深刻な被害をもたらしてきた。中国は世界で最も台風の影響を受ける国の一つであり、広東省、福建省、浙江省などの沿海地域が特に被害を受けやすい。1922年には「汕頭台風」が広東省汕頭を直撃し、推定で5万人以上が死亡したとされる。これは中国史上最悪の台風災害であり、高潮による被害が原因であった。沿岸低地の集落は壊滅し、広大な農地が塩害で荒廃した。この大災害は台風が中国社会に及ぼす影響の大きさを示す典型的事例となった。
その後も中国沿岸部では大型台風が繰り返し被害をもたらした。1956年には「台風ワンダ」と同じく強力な台風が浙江省に上陸し、数千人規模の死者を出した。1975年の「台風ニーナ」では河南省に記録的豪雨をもたらし、板橋ダムが決壊したことで約23万人が死亡した。この災害は、台風自体の風雨被害に加え、インフラの脆弱性が二次災害を引き起こすことを示した象徴的な出来事である。
近年においても、中国南部や香港は台風の脅威に直面している。2008年の「台風ハグピート」や2013年の「台風ウトア」では、広東省や福建省で大規模な洪水や山崩れが発生し、数百万人が避難を余儀なくされた。2019年の「台風レキマ」は浙江省に上陸し、豪雨による土砂崩れで50人以上が死亡した。レキマは経済的損失も甚大で、農業被害や都市の浸水により数十億ドル規模の損失を生じた。また2023年には「台風サオラー」が香港と広東省を直撃し、広域で停電や交通混乱を引き起こしたが、事前の避難と強化された防災インフラにより、かつてのような大量死は回避された。
中国と香港の台風災害は自然の脅威と人間社会の脆弱性の相互作用によって被害規模が決まることを示している。歴史的には高潮や洪水による大量死が多発したが、近年は防災体制の強化や建築基準の向上、予警システムの整備によって人的被害は減少傾向にある。しかし一方で、都市化や気候変動の進行により、経済的損失はむしろ増大している。特に海面上昇と異常気象の増加が懸念される中で、中国と香港は引き続き台風災害への備えを強化しなければならない状況にある。
このように、中国と香港の台風災害の歴史は自然災害と人間社会の対応の歴史でもある。過去の大惨事は、被害の記録として残るだけでなく、教訓として防災政策に反映されてきた。今後も台風の猛威が避けられない以上、これまでの経験を基盤とした持続的な対策が求められている。