◎パンジャブ州は先月末頃からスモッグに覆われ、マスクの着用が義務付けられている。
パキスタン東部パンジャブ州の大気質が劇的に悪化し、同州の市民約180万人が呼吸器系の不調を訴えている。
保健省の報道官は12日、記者団に対し、「ラホールを中心に、パンジャブ州の広い範囲が高濃度のスモッグに覆われ、180万人を超える市民が市内の医療機関や診療所を受診し、喉や目の不調を訴えている」と語った。
パンジャブ州は先月末頃からスモッグに覆われ、マスクの着用が義務付けられている。
ラホールの人口は約1400万人。パキスタン第2の都市であり、世界で最も大気汚染がひどい都市のひとつにランクされている。
スイスに拠点を置く企業「IQAir」のデータによると、ラホールの大気質指数はこの数日、700~800で推移し、危険とされる300を大きく上回っている。1900を超えた日もあった。
保健省の報道官は、「過去30日間でパンジャブ州の市民180万人以上が病院を受診している」と述べたうえで、「実際にスモッグの影響を受けている人の数はこれをはるかに上回る」と強調した。
また報道官は「市内の病院は呼吸器の不調を訴える患者で溢れかえっている」と述べた。
州当局は先月末、18地区の学校に閉鎖を命じた。
その後も呼吸器の不調を訴える人が急増。当局は州内の全ての公園と博物館を閉鎖した。
大気質悪化の原因は車やバイクの排気ガス、焼き畑、野焼きなど。大気汚染は冬に深刻化することが多く、気象条件などの影響により大気がよどみやすい。
州当局はこの事態を受け、道路への散水、環境に有害なレンガ窯の取り壊し、ディーゼル燃料で走行するボロボロの車の使用禁止など、汚染に対処する方策を立案する「スモッグ対策室」を設置した。
当局はスモッグが呼吸器の病気や目の感染症を引き起こしているとして、市民に対し、不要不急の外出を控え、マスクを着用するよう促している。
国連児童基金(ユニセフ)は11日、「記録破りのスモッグ」がパンジャブ州の児童約1100万人の健康を脅かしていると警告した。
国連環境計画(UNEP)は大気汚染により、毎年800万人が呼吸器系の疾患で亡くなっていると推定。微小粒子状物質(PM2.5)を世界の公衆衛生を脅かす最大級の脅威のひとつと評している。
冬の間、冷たい空気はPM2.5を閉じ込め、スモッグをより濃く、長持ちさせる。