◎南部シンド州では3800人以上がデング熱に感染し、これまでに9人の死亡が確認された。
記録的な洪水に見舞われているパキスタンの一部地域で感染症が広がりつつある。
パキスタン国家防災管理庁(NDMA)によると、6月中旬以降の洪水や土砂崩れによる死者は1500人近くに達した。被災者は3300万人と推定されているが、被害の全容はまだ分かっていない。
現地で活動する支援団体や医療関係者は一部地域でデング熱、マラリア、胃腸炎の患者が急増していると報告している。
多くの避難民が屋外に設置されたキャンプで生活し、水の入手に苦労している。保健当局は14日、デング熱の死者が複数確認されていると報告した。
保健当局によると、南部シンド州では3800人以上がデング熱に感染し、これまでに9人の死亡が確認されたという。
シンド州の避難所で活動するパキスタン医師会の代表はSNSに、「シンド州ではデング熱が蔓延し、マラリア患者も増加している」と投稿している。
南部の港湾都市カラチでもデング熱患者が報告されているようだ。保健当局は多くの地域でなかなか水が引かず、感染症にかかるリスクが高まっていると警告した。
大雨が降り始めてから2ヶ月以上経過したものの、まだ数千の村が浸水したままと報告されている。郊外の町や村の排水能力は脆弱で、一度浸水するとなかなか水が引かないようだ。
被災地の道路も冠水しているため、支援団体は物資の輸送に苦労し、被災者は徒歩で移動せざるを得ない状況が続いている。
小さな集落の近くに設置されたキャンプは医療従事者の確保に苦労している。
シンド州郊外のキャンプで働く看護師はAP通信の取材に対し、「人出が足りない」と語った。「体調を崩した子供が数十人、マラリアに感染したとみられる患者が数十人、お腹が痛いと訴える児童や赤ちゃんが数十人います。このキャンプの看護師と医師は私を含めて5人だけです」
水が引いた地域の住民も食料と水の確保に苦労している。キャンプに避難した住民の大半が洪水や土砂崩れで財産を失った。
国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は先週、被災地を訪問し、財産を失った家族と面会した。
グテレス氏はパキスタンへの支援を「寛容や保護」でなく「正義の問題」と評し、国際社会に行動を呼びかけた。「不平等を解消しない限り、同じような事態が何度も繰り返されます...」
「洪水の責任を負っているのはパキスタンではなく世界です。これは気候変動の産物であり、温室効果ガスを放出している国々が引き起こしたものです。G20はそのことを肝に銘じてください。G20の温室効果ガス排出量は世界の総排出量の80%を占めています...」
NDMAによると、シンド州の水が引き、生活再建に向けた取り組みを開始できるのは数カ月先になるかもしれない。しかし、不衛生な水を飲み、お腹をこわした児童や赤ちゃんに数カ月耐える体力はない。
シャリフ(Shehbaz Sharif)首相は14日、南西部バルチスタン州のキャンプを視察し、被災者に支援を届け、補償を提供すると約束した。