◎洪水の犠牲者は15日時点で1500人を超え、50万人以上が避難所や屋外で寝泊まりしている。
パキスタン国家防災管理庁(NDMA)は15日、南部の主要高速道路が運用を再開したと発表した。
NDMAによると、主要被災地である南西部バルチスタン州と南部シンド州を結ぶ高速道路は洪水の影響で数週間閉鎖された状態だったという。
このため、支援物資の輸送に大型トラックが使えず、軍と警察は効率の悪いヘリやボートで物資を輸送していた。
NDMAによると、洪水の犠牲者は15日時点で1500人を超え、50万人以上が避難所や屋外で寝泊まりしているという。洪水により、390の橋と道路インフラ推定1万2000kmが破壊され、家屋約180万戸が浸水したと報告されているが、被害の全容はまだ明らかになっていない。
政府は15日の声明で、「バルチスタン州当局は高速道路とこの地域への電力供給を再開させた」と説明した。
道路の冠水は政府の支援作業に大きな影響を与え、一部地域にはほとんど物資が届いていないとみられる。
政府報道官はSNSに、「大型トラックで支援物資を輸送できる」と投稿。首都イスラマバードには支援物資が山積みになっていると報告した。
また外務省は15日付けの声明で、「多くの国や国際機関の貨物便、約100便が支援物資を届けてくれた」と発表した。国連は国際社会にパキスタンを支援するよう呼びかけていた。
国連のパキスタン調整官は14日の記者会見で、「国連が要請した緊急支援1億6000万ドルに対し、加盟国はこれまでに1億5000万ドルを約束してくれた」と報告した。
世界保健機関(WHO)のパキスタン代表も南部の港湾都市カラチ(シンド州)を視察し、保健当局に医療機器と医薬品を提供している。
WHOはこの数週間、シンド州やバルチスタン州の避難所で感染症の拡大を抑える取り組みを進めている。しかし、被災地ではデング熱、マラリア、胃腸炎などが蔓延しつつあり、国連は取り組みを加速させる必要があると警告している。
シャリフ(Shehbaz Sharif)首相は今週、洪水で自宅を失った人々の生活再建を支援すると約束した。避難所に身を寄せている人々は冬を乗り切れるか心配している。
シャリフ氏は15日、ウズベキスタンで開催されている上海協力機構(SCO)首脳会議に出席した。中国はパキスタンに避難所を提供しているが、支援総額は米国の5000万ドルを大きく下回っている。
シャリフ氏はサミット前の記者会見で、「地球温暖化対策の必要性をSCOに説明する予定」と語った。
パキスタン政府は洪水の被害額を100億ドルと見積もっているが、一部の経済学者は300億ドルを超えるという見方を示している。これは、政府がIMF(国際通貨基金)と2019年に締結した経済支援の5倍に相当する。