昆虫たちの黙示録、多くの個体群が自然危機と戦っている
昆虫個体群の生存状況、健康状態は、「以前考えられていたよりもはるかに複雑である」と新しい調査結果が示している。以前の調査では、世界のあらゆる地域で昆虫の減少が確認、個体によっては10年間で25%も減少、といったことなどが判明していた。
淡水に生息する一部の昆虫たちは増加傾向にあるものの、陸上の昆虫の減少が特に顕著である。世界中の昆虫が急速かつ広範囲で減少しているという報告を、科学者たちは深刻に受け止めている。
昆虫は地球上でもっとも多様な種を有す生物であり、土壌、植物、自然循環などで重要な役割を担っている。ドイツ西部の自然保護区では、一部の種が27年間で約75%減少した、という結果も報告されている。
昆虫の変化(増減、変異、変種など)に関する新しい研究は、世界中で実際に発生している事案をより正確に理解すべく実施されている。1,676カ所、166件の長期調査データを調査した結果、昆虫の健康状態は微妙に変化していることが分かった。
多くの地域でアリ、バッタなどの昆虫が年平均0.92%ずつ減少しているという。10年間で9%、これは現在公表されている減少率よりも低い。すなわち、アリ、バッタなどの昆虫に関しては以前の報告ほど状況は悪くないということだ。しかし、科学者たちはそれでも問題山積、危機的状況にあると警告する。
ドイツ統合生物多様性研究センターのロール・バン・クリンク博士は「年平均0.92%の減少は非常に深刻な事態。30年で25%減少することを意味する。また、その数字はあくまで平均であり、種によっては絶滅も危惧される」と述べた。
多くの人々は、昆虫が減少しつつあることを本能的に受け入れている(と思う)。森や林の減少(環境破壊)、温暖化、ありとあらゆる条件が重なり、一昔前に見た光景(ホタルやトンボの乱舞など)を見なくなった、と思う方も多いのではないだろうか。
ドイツ統合生物多様性研究センターのジョナサン・チェイス教授は、空を飛ぶ昆虫が確実に減少しつつあるという。「車のフロントガラスは空飛ぶ昆虫の天敵。何百、何千億の昆虫たちが交通事故で死亡している。しかし、淡水、水辺に住む昆虫たちは人目に付きにくく、空を飛ぶものたちに比べると、生き永らえていると言えるだろう」と述べた。
昆虫の減少は米国西部と中西部、欧州、特にドイツが最も深刻だった。先述の通り、陸上に生息する昆虫の多くが減少する一方、カゲロウなどの淡水に生息する種は年平均1.08%増加していることが確認されている。
増加傾向の見られた地域・種は、北ヨーロッパ、米国西部、ロシアなど。しかし、淡水の昆虫が増加しても、陸上界の環境は改善されず、減少に歯止めはかからない。
淡水の面積は総陸地面積のごく一部に過ぎない。そして、そこに住む昆虫が増加しても、陸上が荒廃すればいずれは全て失われる可能性が高いと科学者たちは警告する。
「昆虫たちの黙示録」は産業革命頃から始まったとされる。人間は森を伐採し、ニュータウンを造った。石炭を掘り起こし火力発電を開始、町は発展し、道路が整備され、マイカーが当たり前になり、昆虫たちは交通戦争に巻き込まれた。様々な要因が組み合わり、昆虫たちは淘汰されようとしている。
#Nature crisis: 'Insect apocalypse' more complicated than thought @LolitaDickinsonhttps://t.co/EB4IKrAsft
— Christopher White UK (@C_W_UK) April 23, 2020