東南アジア大水害、インドネシアで健康危機深刻化、940人死亡
先月末の豪雨で発生した洪水と地滑りにより少なくとも940人が死亡、276人が行方不明となっている。
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インドネシア・スマトラ島北部のアチェ州を中心とする洪水と土砂災害によって、甚大な被害が広がっている。先月末の豪雨で発生した洪水と地滑りにより少なくとも940人が死亡、276人が行方不明となっている。被災地では「すべて流された」という言葉が住民らの口から漏れ、医療・衛生環境の崩壊に伴う健康危機が深刻化している。
被災地域では家屋やインフラが泥と瓦礫に埋もれ、多くの市民が住居を失った。再建の目処は立たず、避難所や仮設住居も不足している。さらに、洪水で自宅や避難所の衛生状態が悪化し、下痢や発熱などの病気が広がっていると、保健省は説明している。
特に問題となっているのが医療体制の崩壊だ。アチェ州の中心部にある総合病院では医療機器が泥にまみれ、医薬品は流され、注射器が床に散乱するなど、壊滅的な状況に陥っている。42歳の看護師はロイター通信の取材に対し、「医薬が尽き、病院はほぼ機能しなくなっている」と語り、治療が必要な多くの患者に対し「ある薬だけを出すのが精一杯だ」と嘆いた。
新生児集中治療室(NICU)でも浸水により人工呼吸器が使えなくなり、乳児1人が死亡、ほか6人がかろうじて救助されたという。これにより、現場の医療スタッフは「疲労という言葉すら分からない」と語るほど過酷な状況に追い込まれている。
また、洪水で橋や道路も破壊され、医療従事者が別地域に移動することも困難になっている。医師の一人はボートで現地入りしたが、「応急処置室が再稼働するのは月曜になる」と述べた。州全体では、31病院と156の小規模医療センターが影響を受けたと報告されている。
事態の深刻さを受け、スビアント(Prabowo Subianto)大統領は現地を視察し、橋やダムの修復を指示。また、農家向けの国支援ローンの返済免除も命じた。一方、地方政府は非常事態宣言の発出と、さらなる救援資金の確保を中央政府に求めている。
被災住民の中には、「家族とともに住んでいた家がなくなり、服だけが残った。私たちは何も持っていない」「過去こんな災害を経験したことはない」と語る人もおり、精神的なショックも深い。
今回の洪水と土砂災害は被害の拡大、医療崩壊、衛生環境の悪化、インフラ破壊といった複合的な災害の様相を呈しており、再建と救援には長期の支援が必要だ。国内外からの支援、資金援助、水・食料・医薬品の安定供給、そして医療施設の復旧が急務である。
