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温暖化で座りがちな生活に、数十万人規模の死亡増加を招く可能性=研究


背景には、猛暑が日常的な身体活動を困難にするという現実がある。
米ワシントンDCナショナルモール(Getty Images/AFP通信)

気候変動に伴う気温上昇が人々の身体活動を減少させ、将来的に数十万人規模の死亡増加を招く可能性があることが明らかになった。国際医学誌に掲載された研究によると、暑さの増加は運動習慣そのものを変化させ、世界的な健康リスクを拡大させる要因となり得る。

研究では、2000年から2022年にかけて156カ国の身体活動データと気温記録を分析し、将来予測を行った。その結果、平均気温が一定以上に高い月が増えるほど、人々が運動を控える傾向が強まり、身体的不活動が世界的に拡大することが確認された。特に気温が約27.8度を超える月が1カ月増えるごとに、不活動率は世界全体で約1.5ポイント上昇すると推計されている。

この影響は今後さらに顕著になるとみられ、2050年までに数百万人規模で運動不足の人口が増加する可能性がある。その結果、心血管疾患や糖尿病、がんなどの慢性疾患リスクが高まり、年間で約47万~70万人の早期死亡につながるとの試算も示された。

背景には、猛暑が日常的な身体活動を困難にするという現実がある。高温環境では、屋外での運動や移動が危険を伴い、熱中症リスクも高まる。そのため人々は冷房の効いた屋内で過ごす時間を増やし、結果として座位中心の生活に移行しやすくなる。こうした行動変化が長期的に健康へ悪影響を及ぼす。

また、影響の大きさには地域差があり、低・中所得国や赤道に近い地域ほど深刻とされる。これらの地域では空調設備や安全な運動環境が十分に整っていないため、暑さへの適応が難しく、不活動の増加幅も大きいと予測されている。

さらに、男女差も指摘されている。女性は生理的要因や社会的役割の違いから暑さの影響を受けやすく、運動機会の減少がより顕著になる傾向があるとされる。結果として健康格差の拡大も懸念されている。

地球温暖化による健康被害は、熱中症や災害による直接的な死亡だけでなく、このように生活習慣の変化を通じた「間接的影響」も無視できない段階に入っている。研究者らは対策として、屋内運動施設の整備や日陰のある歩行空間の確保など、暑さの中でも身体活動を維持できる環境づくりが不可欠だと指摘する。

気温上昇が進む中、運動不足という新たなリスクにどう対応するかが、今後の公衆衛生政策における重要課題となりそうだ。

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