◎一定の条件を満たせば天然ガスと原子力は持続可能と見なされ、投資の条件などが緩和される。
2021年3月4日/ドイツ、バイエルン州の原子力発電所(ロイター通信)

EUは2日、気候変動を考慮し地球に優しい未来を築くための計画に天然ガスと原子力発電を含めると提案した。環境活動家は昨年末に示されたこの計画を「グリーンウォッシュ・ライセンス」と呼んでいる。

EUを統括する欧州委員会が発表したグリーンラベル制度は、27カ国からなるEU圏内において、何が持続可能なエネルギーへの投資と見なされるかを定義するものである。

計画によると、一定の条件を満たせば天然ガスと原子力は持続可能と見なされ、投資の条件などが緩和されるという。

この計画はEUの2大強国を考慮したものになっている。フランスは全発電量の70%を原子力に依存しており、環境への長期的な影響を懸念されている。ドイツは天然ガスに大きく依存しており、それを再生可能エネルギーへの橋渡しと考えている。

しかし、ドイツの環境相は2日、計画に原子力が含まれていることを非難した。「欧州委員会の決定を受け入れることはできません。ドイツは他の多くのEU加盟国と同じく、原子力への投資に反対しています。原子力発電は持続可能なものではなく、リスクが高く、費用がかかりすぎ、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標に貢献できません」

オーストリアとルクセンブルグも原子力が計画に含まれることに異議を唱えており、法的措置もあり得ると示唆している。

欧州委員会は天然ガスと原子力を無条件に認めるのでなく、あくまで条件を設定したうえで、温室効果ガスの削減に向けた取り組みを加速させるツールのひとつとしてうまく活用したいと主張している。

委員会の金融サービスの担当官は2日の声明で、「EUは石炭のような有害エネルギーからの移行を支援および加速するために厳しい条件を設定している」と述べた。

しかし、気候活動家は天然ガスと原子力への投資を認めるべきではないと主張した。

グリーンピースのEU環境部門を担当するアリアドナ・ロドリゴ氏はソーシャルメディアに、「この反科学計画は史上最大のグリーンウォッシングであり、気候と環境に関するEUのグローバルなリーダーシップを嘲笑している」と投稿した。「計画を破り捨ててください...」

グリーンウォッシングとは環境に配慮をしているように装いごまかすことで、一部の環境活動家は環境に配慮しているように見せる商品やサービスで消費者への訴求効果を狙う企業をグリーンウォッシング企業と呼んでいる。

EUで排出される温室効果ガスの約4分の3はエネルギー利用によるものである。欧州委員会と一部の西側諸国は、「天然ガスと原子力は石炭火力発電所などの温室効果ガスを大量に排出する設備を段階的に削減するのに役立つ」と考えている。

計画に基づき作成される新たな天然ガスプロジェクトは温室効果ガスの排出量にしきい値を設定し、定められた排出目標を達成する必要がある。また、2035年までに既存の石炭火力発電所を再生可能エネルギーまたは低炭素発電所(新型の火力発電所など)に切り替えることも求められる。

原子力の計画には放射性廃棄物を減らし、安全性を向上させる先進技術の研究開発などが含まれる。新設は2045年まで許可される見込み。

電力の約70%を原子力で賄っているフランスは、原子力発電に依存している他のEU諸国とともに、計画に原子力を含めるよう働きかけていた。原子力は2019年にEU圏内で発電された電力の約26%を占めていた。

一方、欧州最大の経済大国であるドイツは天然ガスを計画に含めるよう要求していた。ドイツの原子力発電所は2022年中にすべて閉鎖される予定である。

ブリュッセルのEU本部前に集まった環境活動家は2日、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、マクロン仏大統領、ショルツ独首相のマスクを被り、「EUはガスと原子力に殺される」と書かれた墓碑の前で写真を撮影した。

計画は加盟27カ国の大多数が承認すれば欧州議会の採決に移行する。

2021年11月3日/スコットランド、グラスゴーCOP26国連気候サミットの会場(Alberto Pezzali/AP通信)
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