◎11月にスコットランドで開催されたグラスゴーCOP26国連気候サミットは気候変動の影響を最も強く受けている貧しい国々の怒りで紛糾し、会議は延長を余儀なくされた。
2021年5月21日/中国、内モンゴル自治区の石炭火力発電所(ロイター通信)

2021年は気候変動をめぐる様々な問題が噴出し、多くの議論を促す年だった。

11月にスコットランドで開催されたグラスゴーCOP26国連気候サミットは気候変動の影響を最も強く受けている貧しい国々の怒りで紛糾し、会議は延長を余儀なくされた。

<COP26の主な成果(概要)>
気温上昇を産業革命以前の平均気温のプラス1.5℃以内に抑えるという「努力目標」を世界の共通目標として明記。

・世界の森林面積の約85%を占める100か国以上が2030年までに森林破壊を終了するに合意。

・温室効果ガス排出削減枠をクレジットとして取引する仕組みが成立。これにより、パリ協定のルールブック交渉は完了した。

・合意文書に初めて石炭などの化石燃料の「規制」が明記された。

・米国と中国が今後10年間、気候変動問題で協力するという珍しい共同声明を発表。

・ポーランド、ベトナム、チリなどを含む40カ国以上が石炭からの移行に合意。中国、インド、米国、オーストラリア、日本、その他の石炭に依存している国は拒否。

米国とEUが2030年までにメタン排出量を70%削減するためのグローバルパートナーシップを締結。

気候変動に対処するよう強く求める貧しい国々の怒りは先進国をある程度動かしたが、この勢いは今後数カ月で大きくしぼむ可能性がある。

気候変動問題のキーマンであるジョー・バイデン大統領は政権公約であるビルド・バック・ベターの中で、様々な環境対策予算を確保すると期待されていた。

しかし、共和党は数兆ドル規模の予算に強く反対し、一部の民主党員も国債の追加発行に懸念を表明した。

バイデン政権のインフラ法は数カ月の交渉を経てようやく可決されたが、環境対策予算を含む約2兆ドル(220兆円)の法案は民主党が予算の圧縮に応じない限り上院を通過する可能性は低く、この失敗は他国の環境政策にマイナスの影響をおよぼすと懸念されている。

2021年7月16日/ドイツ、西部エアフトシュタットのブレッセム地区(Rhein-Erft-Kreis/AP通信)

グリーンピース東アジアのイ・スクヒョン氏は、「ヨーロッパへの輸入品に対する炭素税(炭素国境関税)の導入が中国の不満を高める可能性がある」と懸念を表明した。

炭素税は化石燃料の炭素含有量に応じて企業や個人に課す税金であり、ヨーロッパの主要貿易相手国である中国はこの影響を強く受けると予想されている。

イ・スクヒョン氏は英BBCニュースのインタビューの中で、「中国は炭素税を不公平と判断するかもしれない」と指摘した。「EUは炭素税を気候変動対策のひとつと述べていますが、中国は東側への報復とみなすかもしれません...」

EUと中国は人権侵害を含む様々な問題で対立している。

これらの悲観的な見通しはCOP27と28の開催地にも反映されている。27はエジプト、28はUAE(アラブ首長国連邦)で開催される予定。

米ロードアイランド州のブラウン大学のJ・ティモンズ・ロバーツ教授は自身のウェブサイトの中で、「エジプトとUAEは気候変動のリーダーとは到底言えない」と述べた。「発展途上国で開催することはプラス材料かもしれません。しかし、化石燃料に依存している国がより野心的な温室効果ガスの排出目標を定め、守るかどうかは分かりません...」

さらに、一部の国はCOP26の共同宣言に合意したにもかかわらず、自国の目標を更新しないと主張し、混乱を引き起こした。ニュージーランドは宣言の「妥協」を推進したインド、中国、ロシア、ブラジルなどの主要排出国にのみ宣言を遵守させるよう求めている。

ニュージーランドは先進国だが、世界の温室効果ガス総排出量に占める割合は0.1%ほどである。

世界各地で進行中の問題も気候変動対策の足かせになっている。

ウクライナ東部の危機は新たな紛争を煽り、ロシアとEUの対立を悪化させた。

コロナウイルスはサプライチェーンだけでなく、石油と天然ガスの価格を高騰させた。この価格高騰は電気料金に反映され、一部の国はクリーンエネルギーだけで国の電力を賄うことは難しいという厳しい現実に直面している。

米国と中国の対立は西と東の分断を煽り、一丸となって気候変動に立ち向かうというCOP26の目標に影を落としている。中国は気候変動問題に関しては米国と協力すると約束したが、石炭火力発電所の建設を推し進めている。

来年予定されている米国の中間選挙で上院共和党が議席を増やせば、バイデン政権は窮地に追い込まれる。バイデン大統領の支持率はコロナの感染再拡大や警察改革の遅れなどの影響で急落している。

<CO2排出量 国別ランキング 英石油BP調べ/2021年7月/単位:百万トン
1位 中国:9,893.51
2位 米国:4,432.25
3位 インド:2,298.19
4位 ロシア:1,431.56
5位 日本:1,026.85
6位 イラン:649.64
7位 ドイツ:604.84
8位 韓国:577.78
9位 サウジアラビア:565.10
10位 インドネシア:541.35
11位 カナダ:515.14
12位 南アフリカ:434.10
13位 ブラジル:415.20
14位 オーストラリア:370.28
15位 トルコ:369.45
16位 メキシコ:359.68
17位 イギリス:317.15
18位 イタリア :287.10
19位 ベトナム:282.57
20位 ポーランド:279.49
61位 ニュージーランド:34.10

世界計:31,983.65

2021年7月20日/中国、中央部河南省の鄭州の交差点(Chinatopix/AP通信)
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