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海水温の上昇で東南アジアの雨季が激甚化、「超豪雨」に

2つの熱帯低気圧が接近した地域で洪水・地すべりが発生。これにより、アジア各地で1600人余りが死亡、数百人が行方不明となっている。
2025年11月27日/インドネシア、スマトラ島、大雨により冠水した道路(AP通信)

国際的な気象研究者の団体「ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)が10日に公表した報告書によると、人為的な気候変動によって海水温が上昇したことが、最近東南アジア各地を襲った豪雨と壊滅的な洪水、地滑りを強めた可能性が高い。

先月下旬に発生した豪雨はインドネシア、スリランカ、、タイ、マレーシアに壊滅的な洪水をもたらした。

2つの熱帯低気圧が接近した地域で洪水・地すべりが発生。これにより、アジア各地で1600人余りが死亡、数百人が行方不明となっている。

こうした惨事の背景にあるのは暖かく湿った海の存在だ。WWAの分析では、今年の北インド洋の海面水温は過去30年の平均に比べて0.2℃高かったとされる。もし地球温暖化がなければ、海水温は約1℃低かった可能性があるという。

暖かい海は熱帯低気圧に追加のエネルギーと水蒸気を供給し、通常の雨季よりはるかに大量の雨を降らせる原因となる。

WWAは地球全体の平均気温が産業革命前と比べて約1.3℃上昇している現状を指摘。気温が上がると大気はより多くの水分を保持できるため、降雨量の極端な増加、「超豪雨」の発生頻度が増していると警告する。

加えて、都市化の急速な進展、人口密度の高さ、そして低地や洪水多発地帯への住宅・インフラ集中といった社会構造が被害の拡大を助長した。特に、土地の開発や森林破壊によって自然の排水・保水機能が損なわれていた地域では、雨水が一気に流れ込むことで洪水や土砂災害の被害が深刻化したという。

今回の事態について、気候変動の影響を軽視してきた地域社会と国際社会に対する警鐘と受け止める声もある。WWAのような“気候の影響評価(attribution)”は、過去の自然災害を単なる「異常気象」と片づけず、温暖化との因果関係を可視化する手段として重要となっている。

一方で、研究者たちは「気候変動がどの程度、今回の降雨の激化に直接影響したか」を正確に数値化するのは難しいとも指摘している。特に島しょ国や沿岸地域では気候モデルが地域特有の気象パターンをとらえきれないという限界がある。

だが、今回のような壊滅的な洪水と犠牲者数の多さは気候変動の“長期的な変化”ではなく、われわれの社会構造や生活様式を直ちに見直す必要性を示す警告であることは間違いない。

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