IPBES「企業は自然を保護しなければ存続の危機に直面する」
報告書はIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)が3年かけて作成し、150以上の政府が承認した評価で、自然損失がビジネスと世界経済に対して深刻なリスクをもたらしていると指摘している。
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企業は自然を保護しなければ「絶滅」の危機に直面する可能性がある。このような警告が、国際的な科学者グループがまとめた大規模な報告書で示された。報告書はIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)が3年かけて作成し、150以上の政府が承認した評価で、自然損失がビジネスと世界経済に対して深刻なリスクをもたらしていると指摘している。
報告書は生物多様性の損失が経済システム全体にとって「体系的なリスク」となっており、企業はこれまで利益優先の従来型ビジネスモデルを見直して自然保護を中心に据えた戦略に転換しなければ、自らの存続も危うくなる可能性を明らかにした。これには、企業が供給チェーンや事業活動を通じて自然に与える影響を評価し、対策を講じることが不可欠であると報告書は強調する。
報告書の共同作成者の1人であるマット・ジョーンズ(Matt Jones)氏は、「この報告は何千もの情報源を1つの統合された枠組みで提示し、自然損失がビジネスにもたらすリスクと、その逆転のために企業が果たすべき機会の両方を示している」と述べ、「企業や他の重要な主体は、より持続可能な世界経済への先導役となるか、最終的には種の絶滅だけでなく、自らの絶滅のリスクにも直面する」と警告した。
報告書によると、世界の公共・民間部門で自然を損なう活動に向けられる資金は2023年時点で約7.3兆ドルに上り、2030年までに陸域・海域の30%を保護するという国際目標に対して投入される資金の額を大きく上回っている。こうした「逆の流れ」が、生物多様性損失を加速させる要因の一つとなっている。
この報告書はまた、企業が直ちに取り組むべき具体的な行動として、野生種や生態系への影響を定量的に把握・開示すること、環境目標を企業戦略に組み込み、監査・モニタリング体制を強化すること、製品・プロセスのイノベーションを促進することなどを挙げている。しかし現状では、公開企業のうち生物多様性への影響を開示しているのは1%未満にとどまるという調査結果も示され、対策の遅れが指摘されている。
特に建設、食品、製薬、インフラといったセクターが生物多様性損失の影響を受けやすいと述べており、サプライチェーン全体で自然への依存と影響を内包している企業は多いとの指摘がある。こうしたリスクは資源供給の不安定化や規制強化、消費者意識の変化などを通じて企業収益にも打撃を与える可能性がある。
報告書を受け、企業リーダーや政策立案者は環境保全と経済活動を両立させる取り組みを強化する必要があると訴えている。元ユニリーバCEOのポール・ポルマン(Paul Polman)氏は、ビジネス戦略はリスク管理とレジリエンス構築の問題であるにもかかわらず、これまで自然はその方程式にほとんど組み込まれてこなかったと指摘し、「自然への配慮をビジネスモデルの中心に据えることが、今や経済的な成功の鍵だ」と強調した。
専門家は自然保護を軽視したままでは企業の持続可能性は維持できず、長期的な成長や競争力の確保にも悪影響が出ると警告している。報告書はビジネス界が「ビジネス・アズ・ユージュアル(従来どおりの経営)」を脱し、自然との共存を目指す新たな経済パラダイムへの転換を迫るものである。
