経済活動をゆっくりと再開した中国

中国のGDPは、第1四半期で6.8%減少した。これは当局が記録を公開して以来、最悪の縮小幅であると同時に、経済活動再開の難しさも示すことになった。

そもそも当局が発表するデータ、数字を鵜呑みにしてはいけない。経済学者たちは、当局が発表するGDPは過大報告されている可能性が極めて高いと言う。すなわち、2020年第1四半期のGDP縮小幅も参考にはならず、実際はもっと悪化していると指摘する。

ロックダウン、経済活動の停止が中国に大きなダメージを与えたことは間違いない。また、当局は大急ぎで経済活動を再開させたが、全てがすぐ元通りになる、ということもあり得ないのだ。

世界の工場中国が製品の生産、供給を開始すれば、他国の産業に少なからず良い影響を与えるだろう。しかし、今、世界のありとあらゆる産業が自力では立ち上がれないほどのダメージを受けている。そんな中でいくら良い製品も供給しても、買い手がつかねば企業は利益を上げることなどできない。

世界銀行は、中国の成長率が昨年の6%から2%にまで低下すると予測している。さらに事態が悪化すれば、0.1%まで低下すると見込んでいる。中国が復活を遂げる、成長を果たすためには、世界(需要)が同じように回復しなければならない。

動き出す工場

第1四半期の厳しい数字、ニュースを物ともせず、企業は国内での生産活動をゆっくりと再開させている。中国の商工会議所によると、22%の企業が通常業務に戻り、4月末には全体の半数近くが元の状態に戻ると予想している。

また、企業の40%がコロナウイルス感染拡大前の計画に沿って投資を行う、維持すると回答。現時点で人員削減、工場の縮小等は計画にないという。

シルクロードリサーチ社のヴィネシュ・モトワニ氏は、「まだたくさんの人が外出を自粛している。そんな中でも中国企業はゆっくりと活動を再開させており、当局も中国経済復活に向け舵を切った。商工会議所のデータは信ぴょう性が高く、また、5月末までにはほぼすべての企業が生産活動を再開する見込みである」と述べた。

既に述べた通り、中国復活のカギを握るのは需要である。世界銀行のデータによると、中国経済の約20%が輸出で構成されている。世界の産業が元の状態に戻り需要が回復すれば、経済も動き出す。しかし、最大の顧客であるアメリカ、欧州はロックダウンの真っただ中にあり、中国以外の国が活動を再開する見通しは立っていない。

マスクとアルコール消毒液

生産を再開させた企業の多くが、需要の激減に頭を抱えている。自動車の部品を製造しても、メーカーが生産活動を停止していれば意味がない。

しかし、注文がひっきりなしに届く製品もある。それも世界各国から、記録的な勢いと量で。今、世界が中国に求めているものはマスクとアルコール消毒液「のみ」である。アメリカ、欧州、日本、皆がこぞって注文し、入荷される時を手ぐすね引いて待っている。

世界は今、マスク、アルコール消毒液「だけ」を求めている経済調査会社キャピタル・エコノミクスによると、中国でマスク、アルコール消毒液製造が再開されたことで、世界への出荷数が回復したという。

当局は、ありとあらゆる分野の輸出を再開させると目論んでいた。しかし、世界の経済活動が停止している状態では、製品の供給などあり得ない。最悪の事態はまだまだ続くことが予想される。

キャピタル・エコノミクスは、中国の消費者が世界経済の復活につながる、と期待することは無駄である、と述べ、「需要の復活が世界の復活を意味する」と付け加えた。

また、ロックダウンの影響で甚大な影響を受けているサービス業、観光業復活への道はさらに険しい。コロナウイルスに関連する課題は山積しており、また、それらは密接に関係しているのだ。

経済活動を優先し、コロナウイルス対策を怠れば、新たなパンデミックを引き起こしかねない。独裁国家の中国だからこそ、強烈なロックダウンを発動し、コロナウイルスの蔓延を防いだ、という意見もある。しかし、感染者の数、ウイルスを制した、という情報が正しい保証は一切なく、仮に感染者が今も増大しつづけていれば、新たな火種になる可能性もあるだろう。

世界の産業は中国に依存している。特に欧米は中国の成長を利用し、様々な製品を輸入、発展を遂げてきた。今、世界大恐慌は非現実的なものではなくなりつつある。コロナウイルスとの戦いを制するためには、世界が協調し問題をひとつずつ解決していかねばならない

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