1回戦:9月29日、オハイオ州
9月29日現地時間21:00、ドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン氏は久しぶりに顔を突き合わせ、社会的距離をしっかり保ったうえで、最初の大統領討論会に臨む。
ニューヨーク・タイムズからピンポイント爆撃攻撃を受けたトランプ大統領は、税金と最高裁判所判事指名を含む多種多様な問題の対処方法をアメリカ国民だけでなく、全世界に説明しなければならない。
9月28日、バイデン氏がデラウェア州でコロナ対策集会を行っている間、トランプ大統領はオハイオ州で開催された電気ピックアップトラックの宣伝イベントに参加した。
記者に「討論会を楽しみにしているか?」と質問されたトランプ大統領は、不敵な笑みを浮かべながら「私は楽しみにしている。ジョーは知らないがね」と答えた。
一方、別の記者がニューヨーク・タイムズからの爆撃攻撃について質問すると、「連邦所得税をほとんど支払っていなかった」とは認めず、立ち去った。
ABCニュースとワシントン・ポストが行った最新の世論調査によると、バイデン氏が登録有権者、有望な有権者(無党派層含む)の両方で約10ポイントのリードを保っているという。
トランプ大統領とバイデン氏は、コロナウイルスの影響で開戦前の握手を行うことができず、従来とは異なる大統領討論会の幕開けになる。
また、聴衆の数も制限され、会場に集まる全ての人々(関係者含む)がPCR検査を受けたうえで、公衆衛生対策の遵守を求められる。
2020年はトランプ弾劾裁判と民主党予備選挙に始まり、以降、パンデミック、経済崩壊、人種差別(Black Lives Matter抗議運動)、最高裁判所判事、そしてトランプ所得税など、アメリカ国民を悩ませる問題が山積しており、議論が白熱することは間違いない。
・トランプは納税申告書をリリースしますか?
・トランプvsバイデン、討論会の焦点は?
第1回の司会者(モデレーター)は、「フォックスニュースサンデー」のクリス・ウォレス氏が務める。
主要議題は6つ。1つの議題に割り当てられる時間は15分。以下の通りである。
・トランプ大統領とバイデン氏の記録
・最高裁判所
・コロナウイルス
・都市における人種抗議と暴力
・選挙の完全性
・経済
なお、トランプ租税回避術問題は議論されない予定だが、何らかの意見交換が行われる可能性はある。
「トランプ大統領は討論会に向けてどのような準備を行っているか?」と記者に尋ねられたケイリー・マケナニー報道官は、「いくつかのトピックで調整を行っている」と答えた。
ホワイトハウスによると、トランプ大統領の個人弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏と元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏が討論の準備を手伝ったという。
マケナニー報道官はフォックスニュースの取材に対し、以下のように述べている。
ケイリー・マケナニー報道官:
「大統領はメディアからの不公平な質問にも真摯に回答し、メディアの偏った報道にさらされてきた」
「トランプ大統領は歴代のアメリカ大統領の中で最も多くの質問を受け、それに答えてきた。バイデンはコソコソ隠れているが、トランプ大統領は違う」
ここ数週間、トランプ大統領は2016年の選挙運動と同じく、討論の準備を慎重に進めてきた。
今回はホワイトハウスとニュージーランド州ベッドミンスターで模擬討論会を実施し、クリスティ元州知事、トランプキャンペーンチームのマネジャーを務めるビル・ステッピン氏、広報担当者のジェイソン・ミラー氏、ジャレッド・クシュナー上級顧問などが参加した。
情報筋によると、模擬討論会ではトランプ大統領を悩ませる潜在的なトピックや問題についての議論も行ったが、主要議題として扱うことはなかったという。
また情報筋は、「トランプ大統領はバイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏が絡むウクライナとの商取引問題を追跡調査したいと熱望している」と語った。なお、ハンター・バイデン氏は不正取引を否定し、現時点では起訴されていない。
一方、バイデン氏側の情報筋によると、討論の準備は民主党のディベートスペシャリストたちと、副大統領時代の首席補佐官、ロン・クレイン氏によって監督されているという。
なお、模擬討論会でトランプ大統領役を務めたのは、バイデン氏の上級顧問で元ホワイトハウス顧問弁護士のボブ・バウアー氏だった。
バイデン氏はMSNBCの取材に対し、以下のように述べた。
ジョー・バイデン氏:
「私はトランプが行ってきたことに対し、正面から正々堂々と攻撃を放つ。彼の反撃は個人的なものになるだろう。トランプはそれほど頭が良くなく、議論の仕方を知らない。そして、彼は自分が行ってきたことを理解していない」
「私はトランプが失敗したこと、今すぐ見直さなければいけないこと、前に進めなければいけないことを理解している。これからアメリカが進むべき道について議論する準備はできている」
大統領選挙の1週間後(11月10日)には、アフォーダブルケア法(オバマケア)に関する最高裁判所での議論が始まる予定である。
バイデン氏は、数千万のアメリカ国民のヘルスケアがどのようなバランスのうえで成り立っていくかを強く主張したいと考えており、民主党有権者もそれを望んでいる。
ただし民主党は、トランプ大統領が指名したエイミー・コニー・バレット氏の就任を阻止する方法はないと認め、最高裁判所の保守化が進むことでオバマケア廃止の判断にも影響を及ぼす恐れがあると懸念している。
トランプ大統領は、バイデン氏が”ディベートパフォーマンス向上薬”を服用していると揶揄し、討論前と後にテストを受けるよう呼びかけ、自分も同じ薬を服用したいと述べている。
2016年の第1回大統領討論会時にも、トランプ大統領はヒラリー・クリントン氏に対し根拠のない薬服用発言を浴びせ、討論前の薬物検査を要求した。
なお、当然薬物検査など行われず、クリントン氏は開戦早々冷や水を浴びせられた。
トランプ大統領は28日に、「ジョーは薬物検査に同意しないと発表したばかりだ。しかし、彼はなぜ今になって薬を服用したのか?」とツイートした。
これに対しバイデンキャンペーンチームのケイト・ベディングフィールド氏は、トランプ大統領の主張を却下した。
視聴者は、ウォレス氏がリアルタイムで様々な問題の事実確認を行ってくれる(議論を促す)と期待するかもしれない。しかし、大統領討論委員会(CPD)はセクション外の議題は明確に管理されると述べた。
CPDの共同議長を務めるフランク・J・ファーレンコフ.Jr氏はCNNの取材に対し、「討論の司会者と記者は別物と考えなければいけない」と語った。
フランク・J・ファーレンコフ.Jr氏:
「クリスや他のモデレーターがファクトチェッカーになることは期待していない。討論会が終われば、世界のメディア、新聞、テレビにたくさんのファクトチェッカーが現れる。我々はモデレーターを全うするだけだ」
2016年の第3回大統領討論会で司会を務めたウォレス氏は、「ふたりの議論に極力口を挟まず、スムーズな司会進行だけを意識する」と述べている。
戦いは11月3日のちょうど5週間前に行われる。なお、既に何百万人ものアメリカ人が、郵便・期日前投票で両氏のどちらかに投票している。
アリゾナ州、フロリダ州、ウィスコンシン州の州選挙当局は、何百万もの郵便または不在者投票用紙を発行、ミネソタ州、ノースカロライナ州、バージニア州を含む少数の州で期日前投票が始まっている。
【大統領テレビ討論会スケジュール】
・9月29日、オハイオ州クリーブランド
・10月15日、フロリダ州マイアミ
・10月22日、テネシー州ナッシュビル
【副大統領テレビ討論会スケジュール】
・10月7日、ユタ州ソルトレイクシティ
これらは全て現地時間21:00~22:30の間に行われる。なお、CMは入らない。