◎ハンガリーの研究者によると、中国のシノファーム社が開発したコロナワクチンは接種を終えた高齢者に十分な抗体を提供しない可能性があるという。
ハンガリーの研究者によると、中国のシノファーム社が開発したコロナワクチンは接種を終えた高齢者に十分な抗体を提供しない可能性があるという。
研究者は2回目のシノファームワクチン接種から少なくとも2週間経過したハンガリーの被接種者450人の血液サンプルを調査した。結果、50歳未満の約90%で防御抗体を確認したが、その割合は年齢が上がるほど低下し、80歳以上の約50%には抗体がなかったという。
この研究は今週インターネット上で公開されたが、他の科学者のコメントはまだない。シノファーム社の臨床試験をチェックしたと伝えられている3人の外部専門家は以前、このワクチンの開発方法に問題はないと述べていた。
香港大学のウイルス学者であるジン・ドンヤン博士はハンガリーの研究について、「高齢者の抗体結果が悪かったことを非常に心配している」と述べた。
「血液中の抗体レベル=コロナ感染を防ぐ確率」ではないが、抗体測定はワクチンの有効性を判断するうえで重要という証拠が数多く示されている。ただし、一部の専門家は測定に使用するテストキットの種類によっては、研究の精度に影響が出る可能性があると警告している。
北京ユニオン医科大学の元教授で免疫学の専門家である王 成光氏は、「今回の研究はシノファームワクチンが高齢者にどのように機能するかを初めて分析した公的かつ科学的な試みであり、研究結果には価値がある」と述べた。
AP通信によると、中国国家衛生委員会は「政府または主要な研究機関による研究にのみ対応する」と述べ、この研究に関するコメントを拒否したという。
世界保健機関(WHO)はシノファームワクチンを5月に承認し、これまでに50ヵ国以上で接種が進められてきたが、その有効性に懸念が示されたのは今回が初めてではない。
WHOの報道官は21日の記者会見で、「ハンガリーの研究を認識しており、入手可能な全てのデータを使って引き続き調査を継続する」と述べた。専門家たちは数カ月前に「シノファームワクチンは60歳以上の人々に十分は抗体を提供するのか?」とWHOに質問し、WHOは「年齢によって結果(抗体レベル)が異なると考える理由はない」と答えていた。
シノファームワクチンの調査を行った中国の国営企業は、このワクチンの最終段階の臨床試験に参加した人は全員60歳未満であり、「高齢者に効くかどうかを判断する証拠は不十分である」と認めている。
ハンガリーではシノファーム社に対する懸念が高まっており、多くの人が私的な抗体検査を実施するようになった。圧力に直面したハンガリー政府は独自のより広範な調査を実施するとともに、高齢者に無料のテストを提供している。
さらにオルバーン・ヴィクトル首相は先週、国民の怒りの高まりに屈し、接種を終えた個人にブースターショット(3回目の接種)を選択する権利を与えると発表した。しかし、政府事務所はその後、当局が認可したワクチンは全て効果的と補足した。
アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンは5月、シノファームワクチンの抗体レベルが不十分という懸念を受け、被接種者にブースターショットを提供すると発表した。バーレーンは50歳以上の国民やその他の脆弱な人々に対し、「シノファームを接種した場合でも、ブースターショットはファイザーワクチンを推奨する」と付け加えた。
シノファームワクチンの正確な輸出量は明らかにされていない。シノファーム社は今年の上半期中にこのワクチンとシノバックワクチンを5億回分を輸出すると発表している。シノバック社はシノファーム社の子会社。
国連やWHOなどが支援するCOVAXファシリティは最近、この2社に5億5,000万回分の投与を依頼した。