◎スプートニクVはロシアの科学技術力を象徴する世界初の人工衛星にちなんで名づけられ、2020年8月に承認された。
ラテンアメリカや中東のメディアによると、ロシアはコロナウイルスワクチン「スプートニクV」の世界的な注文依頼に対応できず、取引国に迷惑をかけているという。
世界のワクチン供給を調査している企業は、「ロシアは取引国に対するワクチン約10億回分の4.8%しか輸出できていない」と推定した。
ロシアの製薬会社に投資した国営基金の責任者は10月13日の声明で供給の問題は解消したと述べたが、事実か否かは不明。
50歳以上の国民にスプートニクVを接種しているベネズエラは、2020年12月までに1,000万回分を受け取る契約を結んだが、届いたワクチンは今年10月初めの時点で400万回分弱だった。
西半球で最初にスプートニクVを採用したアルゼンチンは12月25日に最初の線量を受け取ったが、契約した2,000万回分の多くがまだ届いていないと伝えられている。
スプートニクVはロシアの科学技術力を象徴する世界初の人工衛星にちなんで名づけられ、2020年8月に承認された。これまでに約70ヵ国がこのワクチンの使用を許可している。
ロシアの国営メディアは今年初め、スプートニクVが西側のワクチンを上回る勢いで世界と契約を結んだことを受け、「ロシアは世界を征服した」と報じた。
スプートニクVはファイザーやモデルナとは違い、1回目と2回目で異なる成分のワクチンを接種する。現地メディアによると、製薬会社は製造プロセスが複雑な2回目のワクチンの製造に苦労しているという。
ライフサイエンスデータ分析会社のエアフィニティは、ロシアは62か国と約10億回分の契約を結んでいるが、これまでに輸出された線量はわずか4,800万回に過ぎないと推定した。なお、契約内容は国によって異なるため、納期遅れの総数は不明。
西側諸国はファイザー、モデルナ、アストラゼネカなどの欧米ワクチンを主に購入しているが、多くの開発途上国は大量供給を約束したロシアと中国のワクチンを採用した。世界保健機関(WHO)と欧州医薬品庁はスプートニクVをまだ承認していない。
アルゼンチンの議会はスプートニクVの納期遅れと3月の感染拡大を受け、他の製薬会社との契約交渉を加速するよう政府に圧力をかけた。アルゼンチンはロシアと2,000万回分の契約を結んだが、受け取った線量は10月12日時点で約1,420万回。
イランでも2回目のワクチンが不足している兆候が見られる。アリレザ・ライシ副保健相は先月、納期の遅れを理由に、1回目のスプートニクVを接種した人々に2回目はアストラゼネカワクチンを接種するよう促した。
トルコは今年4月に5,000万回分の契約を結び、6カ月以内に全線量を受け取るとニュースで報じられたが、6月の時点で届いた線量は約40万回分と伝えられている。
トルコの保健相は8月の声明で、2回目のスプートニクVが届かず、展開に苦労していると述べた。また、1回目と2回目を両方受け取るためにロシアと協議を進めていることも明らかにした。
インドは1億2,500万回の契約を結んだが、届いた線量は10月6日時点で100万回未満だった。
ジョンズ・ホプキンズ大学の公衆衛生教授であるクリス・ベイラー博士はAP通信の取材に対し、「裕福な国によるワクチンの早期契約が、発展途上国に対する納期遅れを誘発した」と述べた。
「スプートニクVの1回目を接種した人は未接種者よりコロナウイルスから保護されます。1回目を接種した人は、遅れが出たとしてもスプートニクVの2回目を接種すべきでしょう。しかし、未接種者およびスプートニクVの展開を開始していない国は他のワクチンを検討してください」