◎北の医療体制、食料危機、コロナワクチン未展開を考えると、オミクロン株の感染拡大は大量死につながる可能性がある
北朝鮮の国営メディアは30日、コロナウイルスと思われる原因不明の発熱患者がわずかに増加したと報じた。
朝鮮中央通信(KCNA)によると、29日の直近24時間に報告された新規発熱患者は10万700人。死者はゼロとみられる。
これで4月下旬以降に確認された発熱患者は355万人を超えた。一方、死者はわずか70人である。
北朝鮮の金正恩(Kim Jong Un)党総書記は今月、原因不明の熱病に対処するよう公衆衛生当局に命じ、非常事態を宣言した。
北の医療体制、食料危機、コロナワクチン未展開を考えると、オミクロン株の感染拡大は大量死につながる可能性がある
北は5月12日にオミクロン株の患者を確認したと報告したが、それ以降、コロナの患者数は公表していない。これはPCR検査キットが不足しているためと思われる。
新規発熱者数は5月15日の39万2000人以上をピークに減少している。
一方、AP通信は中国当局者のコメントを引用し、「平壌は29日に移動制限を解除した」と報じた。
韓国の聯合ニュースも「規制が一部解除された」と報じている。
韓国統一省の報道官は30日、「北の国営メディアは規制に関する情報を報じていないため、制限解除が事実かどうかは分からない」とした。
KCNAによると、キムは29日に政治局会議を主催し、防疫について協議したという。
KCNAの政府高官のコメントを引用し、「党総書記は会議の中で感染状況は改善していると説明した」と報じている。
またKCNAによると、「政治局は現在の疫病対策を踏まえ、効果的かつ迅速に疫病対策規則とガイドラインを調整・施行する方法を検討した」という。
西側の専門家は北の死者数について、「キムのプライドと権威を傷つけないよう、少なめに報告している可能性が高い」と指摘している。
また一部の専門家は、「朝鮮労働党はキムの力を世界にアピールするため、発熱患者を多めに報告している可能性がある」という見方も示している。
北の経済はキム家の不作為、厳しい経済制裁、天災、国境封鎖でひどく疲弊しており、多くの専門家が北の力だけで今回の感染拡大を抑えることは難しいと指摘している。
韓国の世宗研究所のアナリストはAP通信のインタビューの中で、「北の最近の規制強化は石炭、農業、その他の産業部門に深刻な打撃を与えているに違いない」と語った。「ただし、発熱患者が増えようが増えまいが、金正恩の支配を脅かすような事態には発展しないでしょう...」