◎食品医薬品局(FDA)は声明の中で、J&Jワクチンはコロナウイルスに感染した患者の重症化を防ぎ、中等症にも大きな効果を期待できると述べた。
2月27日、米食品医薬品局(FDA)はジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の1回投与タイプのコロナワクチンの緊急使用を承認した。
これでアメリカはファイザーとモデルナに次ぐ3つ目のワクチンを承認したことになる。なお、1回投与タイプの承認は初。
FDAは声明の中で、J&Jワクチンはコロナウイルスに感染した患者の重症化を防ぎ、中等症にも大きな効果を期待できると述べた。3大陸で実施された大規模な臨床試験の結果によると、重症化を防ぐ確率は85%、中等症は66%、最も懸念されている変異種に対しても効果を期待できるという。
また、「ワクチン接種後にコロナに感染した無症状もしくは中等症の患者が、他者にウイルスを広める可能性があるかどうかを判断することはまだできず、時期尚早」と警告した。
国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ所長はAP通信の取材に対し、「素晴らしいニュース、私たちが今すべき最も重要なことは、できるだけ多くのワクチンを市民に供給することです」と述べた。
J&J社は以前、ワクチンは早ければ3月1日までに数百万回、3月末までに約2,000万回、夏までに約1億回分を提供できる可能性があると述べている。
J&J社は、ヨーロッパおよび世界保健機関(WHO)にも緊急使用許可を求めており、年末までに約10億回分の生産を目指している。バーレーンは2月25日に同社のワクチンを承認した。
独立した諮問委員会は1回の投与で済むJ&Jワクチンの効果を保証した。しかし、市民はどのワクチンが優れているかを議論し、一部はファイザーかモデルナ(2回投与)を接種したいと主張している。
FDAの諮問委員会の議長を務めたミシガン大学のアーノルド・モント博士は、「満場一致でワクチンの利点がリスクを上回った」と述べた。
世界中で展開されているコロナワクチンは直接比較されておらず、試験で示された保護率だけでワクチンの良し悪しを判断することはできない。専門家は、「臨床試験に参加した接種者の体調、年齢、環境など、ありとあらゆる条件が全く異なるため、試験で示されたデータでワクチンの良し悪しを判断することは不可能」と述べた。
J&Jワクチンは重症化のリスクを85%、中等症は66%低下させることが臨床試験で分かった。これに対し、ファイザーとモデルナのワクチンは臨床試験で保護率95%を示している。
NIHのコリンズ所長は、「試験で示されたデータだけで特定のワクチンを接種したいと望むことは間違っています」と指摘した。
フランシス・コリンズ所長:
「ファイザーがいい、という理由でモデルナやJ&Jを拒むことは間違っています。承認された3つのワクチンは、あなたに防御を提供します」
J&J社は別の大規模な研究でワクチンを2回接種した場合の臨床試験も行っている。コリンズ所長は、「仮に2回接種した方が効果的と判明した時は、焦らずもう1回接種すればいい」と述べた。
女性保健ネットワークの政策提唱ディレクターを務めるサラ・クリストファー博士は、「変異種が広く流通する前の臨床試験データに基づいて承認されたワクチンとそうでないワクチンを比較することは困難です」と述べた。
ブラウン大学公衆衛生学部のアシシュ・ジャー博士は26日に開催された公聴会で、「今日、J&Jワクチンを接種可能で、明日、ファイザーもしくはモデルナワクチンを接種可能であれば、迷うことなく今日J&Jを接種してください。待つ必要はありません。これらはすべて、コロナウイルスからあなたを保護する素晴らしいワクチンです」と述べた。
1回投与タイプは2回投与より明らか扱いやすい。現地メディアによると、仕事で長期間陸地を離れる漁師にJ&Jワクチンの接種を検討している地方保健当局もあるという。また、移動式予防接種クリニックやホームレスシェルターなどでもJ&Jワクチンの接種が検討されている。
FDAは声明の中で、臨床試験中に深刻な副反応は報告されなかったと述べた。J&Jワクチンの副反応は他のコロナワクチンと同じで、注射部位の痛み、インフルエンザのような発熱、倦怠感、頭痛が報告されている。
また、重度のアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こす可能性は「わずかにある」と指摘したうえで、接種者のアレルギーの有無、基礎疾患の有無、体調などを事前にチェックすることが重要と付け加えた。これはファイザーやモデルナワクチンでも起こり得るリスクのひとつである。
J&Jワクチンは18歳以上の成人にのみ接種が許可された。J&J社は他のワクチンメーカーと同様に、18歳以下の研究を開始し、年内には対象を幼児に広げる予定と伝えられている。また、妊婦への影響も調査する計画とのこと。
J&Jのワクチンについて
・1回投与。
・冷蔵庫で保存できる。
・超低温保存を必要としないため、輸送しやすい。
・18歳の以上の人々に十分な安全を保証できる。
種類 | 保護率 接種回数 | 試験数 (公表数) | 保管条件 期間 | 費用 |
ファイザー | 95% 2回 | 43,538人 | -75℃ 解凍後5日 | 20ドル |
モデルナ | 94.5% 2回 | 30,000人 | -20℃ 6カ月 | 33ドル |
オックスフォード | 62-90% 2回 | 24,000人 | 冷蔵庫 ー | 4ドル |
スプトーニクV | 91.6% 2回 | 19,866人 | 冷蔵庫 ー | 10ドル |
ノババックス | 89.3% 2回 | 15,000人 | 冷蔵庫 ー | ー |
J&J | 重85% 中66% 1回 | 44,000人 | 冷蔵庫 3か月 | ー |
コロナウイルスワクチン:分かっていないこと
・妊娠中の女性や免疫力が低下している人に対しての使用可否および効果。
・18歳以下への効果。(子供を対象とする臨床試験はまだ行われていない)
・HIV/AIDS患者やコロナウイルスから一度回復した人への効果。
・アレルギー反応を引き起こす可能性あり。
・接種者はコロナウイルスから保護されるが、「ウイルスの拡散を防ぐ効果があるかどうか」はまだ分かっていない。
・接種者はコロナウイルスから完全に保護される?症状から保護される?
・コロナウイルス変異種に対する効果。
・免疫を保持できる期間は?